明日はMVR(僧帽弁置換術)後の患者を受け持ちます。
MVRについて、勉強しなきゃな。。はぁ。。
やっほー!お困りごとかい?
あ、いいところに!
MVR後の看護のポイント教えてくれへん?
ええでええで!教えたるわ!
今回の記事では、
- MVRとは?
- MVR後の看護のポイント
を解説していきます。
是非最後までご覧ください!
MVRってなーに?
MVR(僧帽弁置換術)とは、
左心房と左心室にある僧帽弁を人工弁に取り換える手術のことです!
後述するMR(僧帽弁閉鎖不全症)やMS(僧帽弁狭窄症)に対して行う手術です。
実はMRに対しては、MVP(僧帽弁形成術)をすることが多い。
弁が石灰化してる、感染している場合にはMVRが選択される。
僧帽弁の障害が軽度であれば、MVP(僧帽弁形成術)
重度であればMVRが選択されるイメージ。
実際には、自覚症状や心房細動の併発、弁の形態などで判断されるよ!
MVRの流れです。
人工心肺を使用して、心肺停止下で行われます。
人工心肺については以下記事を参照下さい
体外循環が身体へ及ぼす影響 ~人工心肺の注意点を理解しよう~
人工心肺の脱血カニューレは右房に入れることが主流だけど、僧帽弁手術では、人工心肺の脱血カニューレは上下大静脈に入れてるよ。
なんで?
右心房、右心室に血液があると、術中の視野の妨げになるんだ。
だから、右房からの脱血じゃなくて、上下大静脈からの脱血をしてる。
脱血カニューレの位置は、術後に何の創部だっけ?ってならないように把握しておこう。
続いて、術後の看護のポイントをみていきます。
看護のポイント
MVR特有の看護のポイントは以下5点です。
- 術前からの左心系の変化を理解しておく
- 血圧コントロールが大事
- 不整脈に注意
- 右心不全症状に注意
- 人工弁の種類別の凝固管理がわかる
それでは一つずつみていきます!
術前からの左心系の変化を理解しておく
MR(僧帽弁閉鎖不全症)とMS(僧帽弁狭窄症)では、
術前から左房、左室の状態が違うんだよ。
え!どういうこと!?
それでは、
MRとMSそれぞれの術前の心臓の状態をみていきましょう!
MR(僧帽弁閉鎖不全症)の場合
まずは、正常な弁の動きをみて下さい!
次に弁の閉鎖不全の動きをみて下さい!
MRは、僧帽弁閉鎖不全症です。
通常、心臓が収縮する場合、血液を送り出そうと大動脈弁は開き、僧帽弁は閉じます。
しかし!
MRは僧帽弁の閉まりが悪い。
つまりは、
左心室が収縮して全身へ血を送る際に、
左房へも血が逆流してしまう。
常に左房に血液がたまっている状態となり、
その結果、
左房は拡大していきます。
そうなん?ほえええ。。
心臓が拡張期の場合、
大動脈弁は閉じ、再び全身へ血液を送るために左心室に血液をため込みます。
MRは、左房に常に血がたまっている状態。
と言うことは、
左房から左室へ流れる血液の量は、多い?少ない?
左房にたまってるのが流れてくるから・・
左室へ流れる量は。。多くなる?
正解!!
左室へ入ってくる血液量も多くなるから、
MRは左室も拡大するんだ。
そのため、
MRは、左房・左室がともに拡大しています。
ふむふむ。
MRに対してMVRをすると、
僧帽弁の閉まりは良くなり、逆流はなくなる!
しかし‼
弁の状態は良くなっても、左房と左室は大きいまま。
ここは、すごく大事なポイントなんだ!!
術後も左室は拡大したままであり、
ある程度の容量負荷がないと血液を全身へ送り出せない。
術直後は十分な輸液量を維持!
その後は左室の拡大を改善するために、少しずつ輸液量を減らしていく。
また、術後は左室から左房への逆流がなくなります。
今までは、圧力の高い体血管と圧力の低い左房に血液が送っていました。左房に血液が逆流したぶん、左室はぶっちゃけラクをしていました。
術後は、圧力の高い体血管にむかって100%血液を送らないといけないため、
左室の負荷は大きくなります。
MS(僧帽弁狭窄症)の場合
MSは僧帽弁が狭くなっています。
そのため、MSは左房から左室へ血液が十分に流れなくなるんだ。
その結果、左房に圧がかかり左房が肥大する。
MSは、左室への血流が少ないため、左室の容積は小さくなっている。
術後は、左房から左室への血液流入障害が解消されます。
それまで前負荷が小さかった左室は、急激な血液流入に対応しきれず心不全に至ります。
術直後は、左室に過剰な容量負荷をかけないよう、
PAPやCIが低下しない程度のドライな水分管理を行うことが一般的!
血圧のコントロールが大事
僧帽弁の術後は血圧管理が、マジ大切よ!
え?どうして?
血圧が高いと、
置換した僧帽弁や周りの組織におおきな負荷をかけてしまい、
出血や逆流を起こしてしまうリスクがあるんだ。
左室の収縮時に、左室内に高い圧かかる。
その結果、せっかく置換した僧帽弁が破綻するリスクあるんだね。。。
僧帽弁の術後って血圧が上がりやすいんだよね。
- 術後は左室への血液量が増加→心仕事量が増える→血圧あがる
- MR後は左房への逆流なくなり、大動脈への血流のみとなる→左室は大動脈へ駆出するため抵抗が増え、それに打ち勝とうと、収縮力が増える→血圧あがる
特に、僧帽弁の弁輪に石灰化があって、弁輪に術操作を施した場合は出血のリスクが高くなります。
※僧帽弁弁輪は、MAC(mitral annular calcification)と呼ばれてます。MAC症例では特に血圧管理に注意です!
術直後の血圧は、
一般的には収縮期血圧で90~110mmhg程度で管理されます。
必ず、自施設の医師の指示に沿って血圧管理をしてね!
術直後は、降圧薬、復温、適切な鎮痛・鎮静を行い、血圧上昇を最小限するための援助が重要です。
不整脈に注意
術後は不整脈、特にAFに注意が必要です!
術後はドライな水分管理が行われます。
過剰なマイナスバランスは血管内脱水をまねき、AF起こすリスクあるので要注意!
また術前から左房拡大によりAFを発症している場合は、メイズ手術を併用して行うことがあります。
電解質異常などでもAFは誘発されるお!
特に利尿薬を使用している場合は低Kに注意して下さい。
- 水分バランスに注意
- 電解質異常に注意
AFを起こすとさ、
・心拍出量が減る
・血栓を形成し脳梗塞
のリスクあるんだよね。。
AF移行時は、原因をアセスメントし速やかに医師へ報告しましょう!
右心不全に注意
MSや急性MRは、左房の圧負荷によって肺静脈圧が上昇し、術前に肺高血圧症に至ることが多いです。
血液がうっ滞し、血液の通り道が渋滞することで、
TR(三尖弁閉鎖不全症)を併発し、右心不全を引き起こすことがある。
人工弁の種類別の凝固管理のポイント
弁置換につかう人工弁は2種類あります!
- 生体弁
- 機械弁
✅生体弁、機械弁の特徴
生体弁の適応は
➀65歳以上の方 ➁妊娠を希望する女性 ➂抗凝固薬を使えない人。
(ちなみに素材はウシやブタの組織)
機械弁の適応は、65未満の方。
(素材はステンレス合金にカーボンがコーティングされてる)
生体弁は10~15年で、弁が壊れたり、石灰化する。若い年齢の人が生体弁を選択すると再手術しなくちゃならない。だから65歳未満の適応は機械弁なんだね!
手術で植え込んだ弁が内皮化するまでの数か月は、血栓のリスクが高いと言われてる。
血栓できにくいとされる生体弁も
術後3か月未満は以下のPT-INRの抗凝固療法が推奨されています。
人工弁置換術術後(3か月未満)の症例に対するPTINR 2.0~3.0でのワルファリン療法.
僧帽弁形成術後(3か月未満)の症例に対するPTINR 2.0~2.5でのワルファリン療法.引用元【ダイジェスト版】循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)P12
PT-INRってなに?
血液のサラサラ具合を評価する値!
ワルファリンの量はPT-INRをみながら調整するの。
最近はワルファリンの代わりにDOACなどの抗凝固剤が使われることもしばしば。
術後3か月未満は、生体弁も機械弁も抗凝固薬を使用されるのが一般的です。
術後、3か月以降は血栓リスクの高い機械弁は抗凝固継続、
高リスク因子のない生体弁は中止されることが多い。
術後3か月以降のPT-INRの推奨は以下を参考にしてください!
【ダイジェスト版】循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)P13を参考に作成
ここで注目なのは!
AVRは低リスクはPT-INR2~2.5なのに、MVRはリスク関係なくPT-INR2~3が推奨されてるってこと!
ほんとだ!
なんでMVRの方がPT-INR長めなの?
それは血流速度が関係してるんだ!
血流速度は大動脈弁>僧帽弁。
僧帽弁の方が遅いので、MVRの方が血栓ができやすい。
そのため、PT-INRを長めに設定することが推奨されている。
術後は人工弁の種類、リスク因子の有無を確認しながら抗凝固管理をしていきましょう!
まとめ
MVR術後の看護のポイントをおさらいしておきましょう!
✅術前からの左心系の変化を理解しておく
→MSとMRでは術前から左房、左室の状態が違います。心臓の部屋の形をイメージしながら、術後の輸液管理をしていきましょう!
✅血圧コントロールが大事
→術後は血圧が上がりやすい。血圧上がると、弁に負荷がかかり壊れてしまいます。鎮痛や鎮静コントールを筆頭に血圧管理を厳重に行いましょう!
✅不整脈に注意
→MS、MRともに術前から左房に負担をかけています。AFが出現しやすい状態です。術後は水分バランス、電解質異常に注意しましょう!
✅右心不全症状に注意
→MSでは、術前より肺高血圧、右心不全を併発していることがあります。術後は身体所見やパラメーターの推移を注意深く観察していきましょう!
✅人工弁の種類別の凝固管理がわかる
→生体弁と機械弁の特徴を理解する。術式やリスク因子によって推奨されているPT-INRの範囲を把握し、抗凝固管理を行っていきましょう!
あー!ありがとう!
ほんとうに助かりました。
よかった!じゃあ、俺は業務に戻るよ。
明日、受け持ちファイト!
じゃあね!
・・今回はあっさりね。
というか、いつも親切に教えてくれて助かる。
(なんか胸がドキドキする。え?これって、恋?まさかね・・・)
参考文献は以下
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