明日さー、「IABP」装着している人の受け持ちになったのよ。。
おー、ついにIABPデビューするんだ!
そうなんだけど。。よく分からなくてさ(汗)
足の付け根から太い管を入れてシュポシュポ音がしているやつ。。あれってどういう原理なの。。?
大丈夫、一緒に勉強していこう!
今回は補助循環の一つである「IABP」についてです。
この記事を読めば、以下のことが分かります。
- IABPとは?
- IABPの効果
- 前負荷・心収縮力・後負荷
- PCPSと併用する意味
- IABPの禁忌
それでは、さっそくみていきましょう!
おなしゃす!
IABPってなーに?
日本語では「大動脈内バルーンパンピング」と言います!
よく先輩たちが「バルパン」って言ってるのは、これを略してるのか!
そうそう!
下のアニメーションをみて!
文字通り「大動脈内に入れたバルーンをパンピング」して、心臓の拍動に合わせて循環の補助を行っているんだ。
PCPSとの違いは?
補助循環装置のイメージとしては、まずはIABPを使用して、それでもダメな場合はPCPSを回すっていう認識なんだけど合ってる?
うーん、循環補助の観点からみればそうかもしれないけど、IABPとPCPSは別物だと認識しておいたほうが良いと思うよ。
え?そうなの?
それではIABPとPCPSの違いについて、ざっくりみていきましょう!
流量補助と圧補助の違い
PCPSは遠心ポンプを使って血液の流れを補助しています。
つまりは、血液の流量を補助しています。
IABPは、バルーンをパンピングすることで循環を補助しています。
つまり、心臓(左室)の圧補助を行っています。
PCPS、IABP共に補助循環装置であり、それぞれの補助循環の割合は、
- PCPSでは50~80%
- IABPでは15~20%
と言われています。
よく現場で、IABPで循環が保てない場合に「次はPCPSだ!!」という流れになるのは、このためです。
PCPSは流量補助、IABPは圧補助という違いがあることを知っておきましょう。
また、IABPには
- 冠血流の増加
- 後負荷の軽減
という2大効果があります。
この効果はPCPSにはありません。むしろPCPSは後負荷を上昇させてしまいます。
IABPの効果
IABPの効果で「冠血流の増加」と「後負荷の軽減」があるって言ってたけど、どういうこと(汗)?
一緒にひとつずつみていこう!
冠血流の増加
IABPは冠血流の増加が期待できます!
なぜ!?
では、かんたんに心臓の解剖をみていきましょう!
心臓の栄養血管は冠動脈
心臓の栄養血管は冠動脈です。
冠動脈はバルサルバ洞から左右にでています。
ここまでを押さえたら、
次は心周期による冠血流の変動をみていこう。
収縮期
心臓の収縮期には、左室にたまった血液を全身へ送り出しますよね。
その際に心筋が収縮し、冠動脈は圧迫されてしまいます。
右室の心筋は、左室と比べて筋肉量が少ないため、
右冠動脈の血流は維持されます。
しかし!全身へ血液を送っている左室の厚い心筋は、左冠動脈を圧迫し血流は減少します。
拡張期
拡張期はどうなるでしょうか?
拡張期では、送り出した血液の一部が心臓に返ってきます。
動脈壁の弾性により血液が跳ね返ってくることで、
大動脈から心臓へ血液の逆流が起こります。
拡張期には大動脈弁は閉じているので、返ってきた血液はバルサルバ洞に貯留しつつ、左右の冠動脈へ流れます。
拡張期では心筋は弛緩しているので、左右の冠動脈への圧迫は解除され冠血流が確保されます。
「冠血流は、拡張期に約3分の2の血液が流れる」と言われており、冠血流を維持するためには拡張期圧が大切だということが分かるね!
なるほど!
冠血流の維持は拡張期圧が大切っと。メモメモ!
ところで、
IABPはなんで冠血流の増加が期待できるの?
では、IABPの2大効果のひとつである
「Diastolic Augmentation」の説明をしていくよ!
え?なんて言った(汗)!?
Diastolic Augmentation(ダイアストリック・オーグメンテーション)
なんか急に聞いたことない横文字が出てきて、
混乱してるわ。ついていけへんかも。。
大丈夫!
できるだけ、分かりやすく説明していくから!!
まずは下の絵をみて!
IABPはバルーンをパンピングして、
循環を補助してるんだったよね。
うん、たしかそうだったね。
Diastolic Augmentationは、下の絵のように
「大動脈内にあるバルーンを拡張」させているんだ。
ちなみに読み方は
「ダイアストリック・オーグメンテーション」ね。
このバルーン拡張は、心臓の拡張期に合わせて行っています。
この「拡張期に合わせて」ってとこがポイントだよ。
なんで拡張期に合わせてなの?
「冠血流は、拡張期に約3分の2の血液が流れる」っていう話を、下の絵をみながら思い出して!!
あー、確か。。
拡張期には大動脈弁が閉じて、逆流してきた血液がバルサルバ洞にたまる。んで、心筋は弛緩してるから、バルサルバ洞にたまった血液が冠動脈へ流れるって話だったよね!?
そうそう!
そんな心臓の拡張期に合わせて、IABPのバルーンが膨らむことで冠血流がさらに増えます。その結果、心筋への酸素供給が増えるんだ!
なるほどー。
これが「ダイアストリック・オーグメンテーション」の効果なのかぁ!
冠血流は左室圧ー大動脈圧較差によって決まる
この「ダイアストリック・オーグメンテーション」を理解する上で、知っておきたいことを一つ紹介するよ。
なに?
それは、「冠血流は、左室圧と大動脈圧較差によって決まる」ということ。
え?なになに!?
拡張期では、左室は血液を拍出したばかりであり左室圧=ほぼ0mmhgです。大動脈圧=拡張期圧であり、この左室圧と大動脈圧(拡張期圧)較差によって、冠血流量は決まります。
つまり、拡張期圧が高いほど冠血流量は増える?
そう!
拡張期にIABPのバルーンを拡張することで、拡張期圧が上がる。それにより、冠血流量が増えるってことだね。
なんか。。「ダイアストリック・オーグメンテーション」が少しだけど理解できたかも。。たぶん。
後負荷の軽減
次は、
IABPの2大効果のもう一つである「後負荷の軽減」についてみていこう!
おなしゃす!
ところで、後負荷ってなんだっけ?
一回拍出量(前負荷と心収縮力と後負荷)
後負荷とはなにか?の前に、
「一回拍出量」についておさらいしておこう!
「一回拍出量」とはなにか分かる?
んーと、、
一回の収縮で心臓が送り出す血液の量のこと?
その通りだね!
この「一回拍出量」の規定因子は、以下の3つから成るんだ!
- 前負荷
- 心収縮力
- 後負荷
ふむふむ
ひとつみていくよ!
前負荷
とてもくだけた言い方をすると、
前負荷とは、「血液が心臓へ入る時に心臓へかかる負荷」のことです。
例として、大量出血があり血圧低下している時は、この前負荷が足りてないことが考えられます。
心収縮力
心収縮力は、「心臓にたまった血液を送り出すためのポンプ」のような役割があります。
この収縮力が弱いと、心臓(左室)に血液がたまっていても十分に送りだすことができません。
よく「EF40%?あー心機能良くないね(厳密には心収縮力)」とか言われるのは、この心収縮力のことです。
後負荷
後負荷とは、「血液が心臓から出ていくときに心臓にかかる負荷」のことです。
心臓からでていく通り道である血管が、
動脈硬化などで狭かったり硬かったりすると、後負荷がよりかかります。
このように、血液を左室にため(前負荷)、たまった血液を送り出し(心収縮力)、送り出される血液の通り道の広さや弾力性(前負荷)によって、一回拍出量は決まります。
さて話を戻すと、
IABPの2大効果の一つであるSystolic Unloading(シストリック・アンローディング)では、この後負荷の軽減が期待できます。
Systolic Unloading(シストリック・アンローディング)
おさらいです。
IABPは、バルーンをパンピングして循環の補助を行うという原理でした。
Systolic Unloadingは、「心臓の収縮期に入る直前に合わせてバルーンを収縮」させます。
心臓の収縮期直前にバルーンを収縮させることで、
心臓からの血液を送り出しやすくしています。
IABPで管理しないといけない状況の心臓は、ポンプ機能が弱っており血液を拍出する際に大きな負荷がかかります。
後負荷を軽減することで、血液を送り出す心臓のサポートに繋がり、心筋の酸素消費量の減少も期待できます。
PCPSと併用する目的
PCPSは基本的にIABPと併用されます。
その理由は2つあります。
そうなの?なんでだろう?
PCPSによる後負荷の軽減
一つ目は、後負荷の軽減です。
PCPSは左室の後負荷を上昇させ、肺水腫を起こすリスクがあります。
そこで、IABPと併用することでPCPSによって生じる後負荷を軽減させるのです。
Systolic Unloadingの効果が活躍するわけか!!
拍動流をつくる
2つ目は、拍動流の作成です。
PCPSは定常流であり、脈圧が発生しません。IABPを併用することで、拍動流をつくりだすことができます。
IABPで拍動流をつくりだすことで、平均血圧が上がります。平均血圧の維持は臓器灌流の目安になります。特に腎臓や脳への血流は、拍動流で血圧をあげた方が良いとされています。
PCPSについて以下記事をご覧ください
禁忌
禁忌も知っておきましょう!
大動脈に瘤や解離がある場合は、バルーンのパンピングにより瘤破裂や解離の悪化を助長させてしまいます。
中等度以上のARがある場合、
Diastolic Augmentationにより、大動脈から左心室への逆流を助長させてしまいます。
Vol.2へ続く
ボリュームが多くなったので、今回はここまでとします。
次回のVol.2では、IABPを管理する際のポイントとして
- 駆動画面の見方
- バルーンの正しい位置、正しいタイミング
- モードについて
- ウィーニング時の注意点
をまとめていきます。
当ブログは「初学者でも分かりやすく」をモットーに書いています。
導入は当ブログでなんとなく理解し、その後は復習も兼ねて成書で確認しながら理解を深めていって下さい。
ココハレさんの素敵なGIF
今回使用した下記のGIFは、ココハレさんが管理する「呼吸循環の動くイラストGIF https://www.cocorogahareru.com/」から利用させていただきました。
IABP以外にも「素敵なGIF」や「冠動脈と心臓でデザインされたTシャツやトートバッグ」など作成されています。心臓好きな方、是非ご覧になってください!
✅参考文献
コメント
とても分かりやすかったです!
Vol.2の内容も気になるので、ぜひお願いします。楽しみにしてます。
ありがとうございます!
日々の業務に追われてIABP後編書けておらずすみません(汗)
必ず後編書いていきますのでお待ち下さい(^^)