
とうとう心外術後の患者さんの受け持ち始まったよ。。スワンガンツカテーテルはいってるけど、よく分からん。。
PA?CO?CI?あれってなに?
色々繋がってるけど、どこになにが繋がるんだ。。

困ってる顔してるわね!
スワンガンツカテーテルのことがよく分からないって?

あ、えーと、、そうなんですよ。。
(この先輩怖いから苦手。。)

じゃあ、私が教えてあげるわ!

わあ!うれしいです。
よろしくお願いします!!
(マジで?怒られそうで、怖いお。。)
スワンガンツカテーテルとは?

実はスワンガンツカテーテルとはエドワーズ社の商品名なの。

へー!そうなんですか?
スワンガンツカテーテルとは「肺動脈カテーテル」の中の一つ。
「肺動脈カテーテル」は文字通り、肺動脈までカテーテルを入れて、血行動態の評価を行います。

「肺動脈カテーテル」は様々な種類があるんだけど、スワンガンツカテーテルはあくまでその中の一つ。
いつの間にか、スワンガンツカテーテルいう商品名で呼ぶことが一般化したのね。
以下のように肺動脈までカテーテルを入れて、血行動態の評価を行います。

でたー。。
RAP?PAWP?ってなにをみてるんですか?

その数字たちについては、おいおい説明していくわ!
まずは、スワンガンツカテーテルとは「肺動脈カテーテル」のこと!ってことが分かればOKよ。
カテーテルの構造
肺動脈カテーテルは、内頸静脈もしくは鎖骨下静脈から挿入されて、
右心房、右心室を通り、肺動脈に留置されます。

イラストのように黄色、青色、白色の3つのルーメンが一体化した構造になってるのよ!

ルーメンの色での役割の違いってあるんですか?
下は肺動脈カテーテルのイラストです。
※肺動脈カテーテルは多くの種類があります。心房・心室ペーシングできるペーシング用電極がついたタイプがあるなど様々です。自施設で使用されているものはどのような種類であるか、確認してみて下さい。
どんな人に挿入されてる?
自施設では、開心術直後や血行動態が不安定な患者に挿入されています。
近年では、施設によっては開心術後でもフロートラックやオキシメントリ―カテーテルで管理してるケースもあるようですhttps://www.edwards.com/jp/uploads/files/support-trial-CC%20Journal_vol5_EW2018032.pdf
ただ、確実な全身の血行動態評価が必要な場合は、肺動脈カテーテルでの管理をする場面は依然多いと思います。

それでは、実際に肺動脈カテーテルでなにをモニタリングしているのか?
一緒にみていきましょう!

おねがいします!!(今のところ優しい。。)
なにをみてるの?
ざっくり言うと、肺動脈カテーテルの値をみることで「フォレスター分類」を使って管理をすることができます。

フォレスター分類って習ったことあるぞ。。なんだっけ。。?

フォレスター分類を使って心不全の病態評価ができるのよ!
下のイラストをみて!

フォレスター分類はⅠ~Ⅳに分けられる。
Ⅰは正常!
Ⅱはうっ血しているけど心拍出量はOK!
Ⅲは水分足りなくて心拍出量✖。
Ⅳはうっ血&心拍出量✖。
みたいなイメージ!

ふむふむ。
ここで出てくるのが、「PAWP」と「CI」です。

肺動脈カテーテル入っていれば、
これらの値をみて評価することができるのよ!

おぉ。。ところで、PAWPとCIってなんですか。。?
PAWPとは?
PAWPとは「肺動脈楔入圧」と言います。

はいどうみゃく・・なんて読むんでしょうか?

せつにゅうあつね!(笑)

ありがとうございます!!(今日優しい。。)

このPAWPは、なんの値をみてるんですか?

ずばり、PAWPは左心系の前負荷の評価指標になるわ!
まずは下のイラストをみて!

PAWPはLVEDPとほぼ同じ値。
LVEDPとは、字のとおり左室が拡張した圧力の値。
つまり、PAWPは左室の容量やどのくらい圧がかかってるか?を評価することができる。

ん?ん??
どういうことでしょうか???
なんで、PAWPとLVEDPがほぼ同じ値なんですか?

PAWPはバルーンで肺動脈を遮断することで測るの。そうすることで、右室の収縮に影響されない圧を知ることができるのよ。
下のイラストをみて!
右室からの圧はバルーンで遮断されてるため、PAWPとLAP(左房圧)はほぼ同じ値になります。さらに拡張期には僧帽弁が開くのでLAPとLVEDPもほぼ同じ値になります。

つまり、PAWP≒LAP≒LVEDPとなる。
LAP(左房圧)、LVEDP(左室拡張末期圧)は「左心系」。
なので、PAWPを測ることで左心系にかかる圧力が分かるということです。

なるほど!です!
ちなみに、PAWP測定のためにバルーンを拡げますが、バルーンを膨らませたままにしておくと肺梗塞を起こす可能性があります。

こわ。。

なのでバルーンを膨らませる時間は最小限にしたいわね。
ちなみにバルーンを膨らませてなくてもPAWPの近似値としてモニタリングできるものがあるのよ。

なんですか?それは?
拡張期PAP≒PAWP

実は、「拡張期のPAP」≒PAWPになるのよ!

PAPってなんでしたっけ?

PAPは「肺動脈圧」のことよ!

・心収縮期は肺動脈弁は開き、肺動脈へ血液が流れるの。その時の肺動脈は「収縮期PAP」。
・心拡張期は肺動脈弁は閉じるわ。その時の肺動脈圧は「拡張期PAP」。

へー。
なんで「拡張期PAP」≒PAWPになるんですか?

下のイラストをみて!
心拡張時には肺動脈弁も大動脈弁も閉じています。
そのため、拡張期PAP≒LAP≒LVEDPになります。

前述したようにPAWP≒LAP≒LVEDPのため、拡張期PAP≒PAWPとしてモニタリングに活用できるのよ。
バルーンを膨らませてPAWPを測定しなくても拡張期PAPをみることで左室系の前負荷の評価ができるってことね!
※僧帽弁閉鎖不全や肺血管病変等あれば、上記値は近似値ではなくなるため注意です!
CIとは?

つぎにCIについてみていくわよ!
CIは心係数といって、CO(心拍出量)を体表面積で割った値。
COを個々の体格差を是正するために、体表面積に換算した心機能の指標。

フォレスター分類ではCIが2.2未満で低心拍出ではいか?と評価するので、CIは大事ね!

ちなみにCO(心拍出量)の求め方は、
CO(心拍出量)=SV(一回拍出量)×HR(心拍数)
なんだけど、肺動脈カテーテルではCOの測定方法が変わってくるのよ。

え、そうなんですか?
CO(心拍出量)の測定方法

ここでは、肺動脈カテーテルでのCO(心拍出量)の測定方法を説明していくわ!

おなしゃす!!

は?

あ、、お願いします。
(あまりにも優しかったから調子に乗りすぎた、やっぱ怖ぇぇぇぇ)
肺動脈カテーテルの途中にサーマルコイルとサーミスタがあります。
サーマルコイルに電気を流して、熱を発生させます。すると周りの血液の温度が上がります。
しばらくして電気の流れをとめます。ここから血液の温度は下がってきます。
この温度が上がり始めてから元に戻るまでの時間を測ることで、心拍出量が求められます。

・心拍出量が多い時はすぐに血液の温度は戻る。
循環がはやいため、温められた血液はすぐに送り出されるからよ。
・心拍出量は少ない場合は、さっきと逆。
血液の温度の戻りが遅くなるからよ。

勉強になります!(もう地雷ふみたくねぇ)
フランク・スターリングの法則

肺動脈カテーテルで測定できるPAWPとCIをみることで、フォレスター分類を活用できることは分かった?

はい!なんとなくですが。。

フォレスター分類を活用するためには、もう一つ大事なことがあるのよ。

なんですか?

それは「フランク・スターリングの法則」よ。
下のイラストをみて!
左室拡張末期容積は前負荷の指標です。この容積が大きければ大きいほど、心臓はポンプとして血液を全身に血液を送り出しやすくなり、一回拍出量は大きくなります。

ただし!前負荷がある一定ラインを超えると、むしろ一回拍出量は減る。(心室機能曲線の下降脚というわ)
輸液などで左室拡張末期容積が増えると、上昇したLVEDPにより肺うっ血が起こるのよ。
「フランク・スターリング曲線」と「フォレスター分類」を関連づけて、管理していくことが大切になります。

補足よ!
心臓疾患の患者さんは心臓のリモデリングが進行しているため、圧データなどに関しては基準値をオーバーしていることがあるの。

リモデリングってなんですか?

心臓が血行力学的負荷に対応して循環動態を一定に保つために構造と形態を変化させることよ。
基準値で圧データをみるのではなく、手術前の心臓の状態からどう変化しているのか?手術後の経過としてどのように変化しているのか?(改善?悪化?)を観察し、アセスメントすることが大切になります。
管理上の注意
肺動脈カテーテルは、心臓の中を通って肺動脈に位置しています。

心臓の中をカテーテルが通ってるのって怖いですね。。

そうなのよ。カテーテルが正しい位置にないと、正しいデータが得られないだけではなく、とても危険な合併症を起こす原因になるのよ。
そのため、肺動脈カテーテル挿入中は起こりうるリスクを把握して、管理していくことが大切です。
ポイントを一つずつみていきましょう!
肺動脈カテーテルの波形
まずは肺動脈カテーテル先端の位置による「波形変化」を知ることが大切です。

肺動脈カテーテルの青色が右心房に位置していて、RAP(CVP)を測定できる。
黄色は肺動脈に位置しており、PAP・PAWPを測定できる(PAWPはバルーン膨らませた時だけ)!
つまり、
肺動脈カテーテルでは常時「PAP」と「RAP(CVP)」のモニタリングができます。

なので!
まずはPAPとRAPの波形を把握しておくのよ!
そしてPAWPを測定すると、下の波形になります。

これらの波形がみられれば、カテーテルの先端が正しい位置にあると判断できるわ。

正しい位置にない時は、どんな波形になるんですか?

良い質問ね。
つぎの項でみていくわ!
異常な波形

PAPの波形をもう一度みて!

このPAPの波形が、下のように変化したら注意よ!
カテーテルが抜けて右心室に落ちてしまった状態は、とても危険です。
それが刺激となり致死性不整脈を起こすリスクがあります。

こわ。。

カテーテルの長さが深すぎても波形が変化するわ。

肺動脈の波形変化の注意して観察することって、ちょー大事ですね。

上記を考えれば、波形変化あればただちに医師へ報告することが必要ね。

はいっ!!
カテーテルのロックの確認

肺動脈カテーテルの挿入の長さが変化しないように、カテーテルのロックの有無を確認することが必要よ。

はいっ!
どこにあるんですか?

特に刺入部側のロックが重要よ。シースと固定しているからね。コネクター側はスリーブ(ビニールのカバー)の固定をしているわ。
2か所どちらもロックできているか確認するのよ!
挿入の長さの確認、胸部レントゲンで肺動脈カテーテルの先端の位置を確認することも大切になります。
シリンジのロックの確認

もう一つ!シリンジもロックされているか確認するのよ!

シリンジ?

PAWP測定時にはシリンジでバルーンを膨らませるのよ!
思い出した?

あー、そうでした!

このバルーンが膨らんだままだとどうなるんだっけ?

たしか、、肺梗塞を起こすリスクがある。。?

正解よ!!
間違ってシリンジを押してバルーンが膨らせないように、下のイラストのようにロックがかかっていることを確認するのよ!

必ずシリンジがデフレ―ト(バルーン萎んだ)された状態でロックよ。
インフレート(バルーン膨らんだ)された状態のままだと危険だからね!

はいっ!!!
まとめ

じゃあ、ここまでの学びを教えてちょうだい!

あ、はい!!
(だから怖ぇって)
- スワンガンツカテーテルとは?「肺動脈カテーテル」の一つで、エドワーズ社の商品名!
- CVP(RAP)は右心系の前負荷の評価、PAP・PAWPは左心系の前負荷の評価ができる!
- PAWP・CIの値から、「フォレスター分類」「フランクスターリング曲線」を用いて、現在の状態と治療の方向を考える!
- 拡張期PAP≒PAWP≒LAP≒LVEDP!
- 値だけではなく、波形変化のモニタリングも行う。波形変化はカテーテルの逸脱が考えられる。致死性不整脈や肺動脈穿孔の発生を考慮し、ただちに医師へ報告!!
- 上記リスクを考えながら管理することが大切!!

やればできるじゃない!
つぎは何を教えてほしい?

また困った時はお願いします。
(怖いんでもう勘弁す)
✅参考文献
https://www.edwards.com/jp/uploads/files/support-trial-CC%20Journal_vol5_EW2018032.pdf
コメント