今回はCABG(冠動脈バイパス術)のパート②として、
術後の看護のポイントをみていきます!
パート①では、各グラフトやCABGの術式の特徴をみていったよ。
それらを理解して術後の看護をしていくことが大切だよ!
前回のCABGのパート①を読まれていない方は↓の記事参照下さい。
CABG(冠動脈バイパス術)パート① ~各グラフトの特徴&術式の種類を解説~
それでは、さっそくみていきましょう。
CABG後の看護のポイント
CABG後では以下に注意して看護を行いましょう。
- LOS(低心拍出量症候群)
- PMI(周術期心筋梗塞)
- 心タンポナーデ
- 不整脈
- 縦隔炎
- 人工心肺の合併症
LOSとかPMIとか、よく分からん注意点あるやないか!?
安心して!
この記事を読んだら、分かるようになるから!
一緒に頑張ろうや!
LOS(低心拍出量症候群)
LOSってなに!?
outputである心拍出量が少なくなる、つまり循環動態が破綻してしまうことだよ。
LOS=低心拍出量症候群っていうんだ。
循環動態が破綻。。。血圧下がったり、尿量が少なくなったりするの?
そうそう。それ以外にも見るべき項目はあるんだけどね。
LOSを考える上で、フォレスター分類を知っておくと理解しやすいです。
フォレスター分類って聞いたことあるような。。ないような。。。
フォレスター分類は
Ⅰ~Ⅳに分けられるんだ。
下の図でざっくり解説すると、
Ⅰは正常!
Ⅱはうっ血してるけど心拍出量OK!
Ⅲは水分足りなくて心拍出量✖。
Ⅳはうっ血&心拍出量✖。
LOSはoutputである心拍出量が少なくなる、つまりⅢとⅣの状態のこと。
図にあるCIは心係数と言って、心拍出量を身体の面積で割ったもの。
つまり血液が身体へどれだけ循環できているかをみるもの。
CIが2.2より低いと心拍出量が低下していて、outputが低下していると評価するんだ。
へー。
図にあるPAWPって何?
PAWPは「肺動脈楔入圧」と言って、左心系の心負荷を評価するもの。
ここではPAWPが高いと身体の中の水が多い、逆に低いと水が少ないとイメージしてくれたらいいよ。
ちなみにスワンガンツカテーテルのバルーンを拡げた時にしか測れないんだ。スワンガンツカテーテルのパラメーターの読み方は、説明すると長くなるので。。ここでは割愛するお
✅こんな風にイメージして下さい
- CIが高いと循環良好、低いとLOSの状態
- PAWPが高いとうっ血している、低いと脱水
ふむふむ。
CABG後にLOSになる原因って何だろう? 術中の出血とか!?
CABG後にLOSになる原因は様々です!
- 術後出血
- 人工心肺に伴い血管透過性が亢進し、サードスペースに体液が移行
- PMIによる心臓の壁運動低下(PMIは後述します!)
- 利尿亢進による循環血液量減少 etc
さらに長時間の人工心肺は、心筋保護液を使用しても、長時間の心筋虚血に伴う心機能低下や術後の心筋再灌流障害の影響が強くなるんだ!
LOSの観察項目は
スワンガンツカテーテルが入っていれば、CIが低下していないか確認しましょう。
それに加えて、PAWP低下、CVP低下、頻脈などあればフォレスター分類のⅢ
PAWP上昇、CVP上昇などあればフォレスター分類のⅣかもしれない?と疑いましょう!
その他にも
- 末梢冷感
- チアノーゼ
- 尿量低下
- 血圧低下
など循環不全のサインがないか確認しましょう!
LOSを疑う場合ってどんな対応すれば良いの?
LOSへの治療方法もフォレスター分類に沿って考えるんだ!
下の図をみてごらん!
✅フォレスター分類Ⅲを疑えば、輸液・輸血の負荷。
✅Ⅳであれば、強心薬や血管拡張薬。それでも対処が難しい場合、IABPやPCPSによる心肺補助を行う。
✅ⅡのままだとⅣに移行してしまうかもしれないので、利尿薬や除水を行う。
みたいな感じで対応を考えるんだ!
フランク・スターリング曲線をイメージしてみると良いよ!
上の図の赤と緑の曲線を要チェケ!
フランク・スターリング曲線って?
ゴムを想像して見て!
引っ張った分だけ張力が増えるでしょ。
心臓も輸液を入れて引き伸ばされれば、その分収縮力が増える。
ただし限界を超えると、収縮力・拍出量は低下し心不全を起こす。
低心機能の場合は、限界域も小さくなるので、Ⅲの状態で輸液をしてもⅣになるリスクが高いんだ。
だからⅢの場合は輸液以外に、強心薬や後負荷軽減のために血管拡張薬を使うのか!
フォレスター分類&フランク・スターリング曲線を意識しながら、LOSの対応をすることが大切です!
周術期心筋梗塞(PMI)
周術期に心筋梗塞を起こすかもってこと!?
そうなの!
原因は様々で、以下の通り。
✅PMIの原因
- 術中の低血圧
- 心停止下の手術による不十分な心筋保護
- グラフト吻合部の閉塞・狭窄などの血流不足
- 冠血流が十分に維持できないことで、心筋虚血や不整脈を起こす
- 術中に空気や脂肪などの組織が血管内に迷入し、塞栓を起こす(空気塞栓であれば、冠動脈に与える影響は一過性であることが多い) etc
この中でも最も起こりやすい原因としては、
心停止下の手術による不十分な心筋保護と言われているんだ。
CABG術後の管理で必要なことは、グラフトの冠血流を維持できる循環動態を維持することです。
そのためには、
前の項でみたLOSによる循環動態の破綻を回避しないといけない。
CABG術後の管理は前負荷を保ち、拡張期血圧を維持することが大事。
なんで拡張期血圧?
実は、冠動脈は心拡張期に循環されています。
ちなみに心拍出量の5~10%の血液が心筋へ送られているYO!
「血圧低いなー」ってどの血圧を見て判断してる? ~「収縮期」「拡張期」「平均」を使い分けできる看護師になるために~
血圧については↑の記事を確認しておこう!
CABG後は前負荷を保ち、拡張期血圧を維持する。
そうすることで、CIを増加させ、LOSによるPMIが起こらないように管理することが大切ってことか!
手術室からの申し送り時に、再建グラフトの種類やバイパスした場所を把握して、術直後の管理をすることも大切です。グラフトの中でもRGEAとRAは冠動脈スパスムを起こしやすいです。
あわわわ!
↓の記事で各グラフトの特徴を確認や!
CABG(冠動脈バイパス術)パート① ~各グラフトの特徴&術式の種類を解説~
使用されたグラフトによって、PMIが起こるリスクを評価し観察が大切です!
ふむふむ。
で、それらを踏まえてた上で、
術直後でどうやって対応すればええんや!?
術直後には12誘導心電図を測定し、術前の心電図と比較します!
- 吻合部や吻合部以外の冠動脈に新たな異常がないか確認!
- 血液検査から逸脱酵素の上昇(CK、CK-MBなど)を観察!
その後はモニター心電図でもST変化を経時的に観察。変化認めた場合は12誘導心電図を測定し、医師報告し指示を仰ぐ。
胸部症状の確認も忘れずに!
PMIの心筋虚血が起こると、壁運動の異常を認める。そこから心不全となる場合があるので、肺動脈圧の上昇や四肢末梢の湿潤など心不全兆候の出現にも注意します。
過度な酸素投与は冠動脈の攣縮をきたしやすいため、PaO2やSPO2を確認し、医師指示のもと、酸素減量を図ることも大切になるよ!
心タンポナーデ
心タンポナーデってなに!?
心臓と心外膜という膜の間には心嚢液が流れてる。
この心嚢液が何かの拍子で溜まってしまうと、心臓が拡張できなくなり、十分な血液を拍出できなくなる。
これを心タンポナーデというんだ。
心タンポナーデの症状とは、
Beck3徴が有名だよ!
- 血圧低下
- 頸静脈怒張
- 心音減弱
国試にも出たんじゃない?
あー!国試に出てたかも(出たっけ?知らん)
ところで、CABG後は何で心タンポナーデが起こるかもしれないの?
CABGに限らず、いわゆる開心術は、胸骨正中切開をして、縦隔に到着、心膜を切ってオペをします。
術後は、どうしても血漿成分が溜まるので、
体外に出すために心嚢ドレーンや縦隔ドレーンを入れるんだ。
心嚢ドレーンや縦隔ドレーンが閉塞してしまうとどうなると思う?
え?やばいことになりそう。。
ドレーンが閉塞しドレナージ不良になると、心嚢内や縦隔に血液が貯留し、心タンポナーデが生じます。
術直後は低体温や凝固因子の減少により易出血状態が予想されますが、ヘパリン中和剤や止血剤の影響で凝固しやすい状態になっているかもしれません。
凝固系の検査データの推移を観察し、易出血状態なのか?あるいは凝固しやすい状態なのか考慮しながら、閉塞予防のためのミルキングや排液量と性状の観察をすることが大切だよ!
また、ドレーン排液量の急激な減少や刺入部からの漏れはドレーン閉塞を疑いましょう!止血剤投与後の粘性増加など、ドレーン性状の変化も観察することが大切です!
不整脈
CABGでは、術中に大量の輸液や輸血を行います。
大量の輸液や輸血によって、電解質が異常値になることもしばしば。
さらに、OP操作や心筋の低酸素など不整脈を起こす要因が多いんだよ。
術後は心機能が低下しているため、通常では影響が出ない程度の不整脈であっても循環動態の悪化につながります。
怖い。。。
なので、術後は不整脈の早期発見、早期対応が重要!
モニターアラームの設定を適切に行い、モニターを常に意識することが大事!
術中の輸液や輸血量、出血量、血液検査結果から電解質異常を把握することが大切になってくるよ!
さらには、術前の腎機能障害の有無、尿量増加時にはカリウム値が変動しやすい状態を予想して観察していきます。
術後の不整脈予防は、
定期的な血液データの確認(Na、K、Ca、Mgなど)して、適宜医師へ確認しながら電解質を補正することが大切ってことか!
そ、そうだね。。(急にもの分かりが良くなるな。。)
電解質の他にも、血液内容量やSPO2を正常に保つこと、十分な鎮痛管理が大切になってくるよ。
縦隔炎
内胸動脈(ITA)をグラフトとして使用した場合は、縦隔炎に注意が必要だよ!
なんで?
内胸動脈(ITA)からは、縦隔へ栄養を送る分枝血管が出てるんだ。
特に、両側の内胸動脈(ITA)使用時は、胸骨への血流が低下することから、他の心外OP後より縦隔炎を生じやすい。
CABG(冠動脈バイパス術)パート① ~各グラフトの特徴&術式の種類を解説~
の記事でITAの特徴について書いてるから復習してみて!
あわわ。書いてたっけ?
CABGで使用する各グラフトの特徴おさらいしとこ。。
✅縦隔炎の観察項目
- 炎症データの上昇?
- 創部が赤くなってないか?
- 息苦しさがないか? etc
糖尿病などで末梢血流が悪い人は特に要注意やで!
人工心肺の合併症
術式がONCABの場合は、人工心肺が生体に及ぼす影響も考慮して観察していく必要があります。
- 術後出血
- 脳梗塞を始めとした塞栓症
- アシドーシス
- 電解質異常
- 心不全
- 大動脈解離 etc
人工心肺の注意点は、↓の記事にまとめているので、チェックしてみて下さい!
体外循環が身体へ及ぼす影響 ~人工心肺の注意点を理解しよう~
まとめ
あー!やっとおわった!
今回のCABGは長かったわー。
そのぐらいCABG後の看護は大切ってことだよ!
確かに!
おかげで、大切なポイントを理解できた気がするよ。
それでは質問です!
- ONCABは人工心肺を使う?使わない?
- 一番開存率の良いグラフトは?
- 術後スパスムに注意するグラフトは?
えーと、えーと。。
答えられなかった方は、↓記事で復習してみて下さい。
CABG(冠動脈バイパス術)パート① ~各グラフトの特徴&術式の種類を解説~
あははは、人間なかなか覚えられんもんやね!
(こいつ、急に問題だしてくんなよ)
(お!笑ってる!反応が良いってことは、もしかして脈あり?)
そ、そうだな!何度も繰り返すことが大事だね。
「ところでさー、君と君の知らない術後の看護をつなぐバイパスになりたい。君のグラフトになりたい!付き合ってください!」
は?
私、彼氏いるんだわ(こいつ、きっしょい)
ぎゃ、ぎゃふん
以下は参考文献です!
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