今回は輸血について学んでいきましょう!
臨床でよく取り扱う
- RBC
- FFP
- PC
の取り扱いのポイントを解説していこうと思います。
今回の記事を最後まで読めば、
「PCを振とうする理由は?」「なぜFFPだけ凍結保存してる?」「RBC、FFP、PCの投与する目的」が分かります。
それでは一緒に学んでいきましょう!
✅動画で学びたい方はこちらをご覧ください!
RBC(赤血球製剤)
さっそくですが、RBCからみていきます!
RBCはRed Blood Cellsの略で、
「赤血球性製剤」のことです。
RBCの投与の目的は?
どんな時に投与されるかと言うと、
「出血」や「貧血」の際に投与されます。
RBC投与の目的としては、Hb(ヘモグロビン)の補充です!
Hbは、酸素を全身の臓器へ運ぶ役割があります。
このHbの量が少ないと、臓器への酸素が足りなくなり
その状態が持続すると生命の維持が困難になってきます。
そのため、Hbが低いときには、RBCの投与が必要になります。
RBC投与の基準は、その時々で異なりますが
周術期ではHb<7の場合には、RBCが投与されていることが多い印象です。
ちなみに「RBC2単位投与したら、Hbはどのくらいあがるのか?」についてはこちらの動画でまとめてます。
つぎは、
RBCの管理上の注意点についてみていきます!
RBCの温度管理について
RBCは温度管理が大切です!
RBCが病棟に届きましたが、ナースコールが鳴ってあなたはその対応にいったとします。そして、そのままRBCを室温で放置したとします。
そのままにしておくとRBCはどうなるでしょうか?
そのままにしておくと、
細菌が繁殖したり溶血を起こしたりと、輸血の効果が低下していきます。
60分以上室温で放置された場合、そのRBCは使用できなくなります。
やむをえず、すぐに投与できないRBCは室温で放置せずに「2から6℃に設定してある輸血専用の冷蔵庫」に保管する必要があります。
ただし、輸血専用の冷蔵庫がない部署が大半だと思いますので、
すぐに投与できないRBCは、一度管理部門に戻しましょう!
RBCを室温で放置することは、絶対やめましょう!
RBCの外観の観察について
外観の観察は大切です!
「血液バック内の色が黒くなっていないか?」を確認しましょう。
個人的には、ロット血と血液バック内の色の違いをみています!
もし血液が感染していた場合、血液バック内の方が繁殖しやすくバック内が黒く変化しています。
細菌感染したRBCの色の変化
以下は、エルシニア菌を接種したRBCの色の変化の一例です。
エルシニア菌の増殖により21日後には、RBCの色は黒く変化しています。
外観の観察は、とても大切です!
FFP(新鮮凍結血漿)
つづいて、FFPについてみていきます。
FFPは、
「Fresh(新鮮)なFrozen(凍結)したPlazma(血漿)」の略語で、日本語で「新鮮凍結血漿」といいます。
つまり、FFPはフレッシュな状態で凍らした血漿製剤のことです。
FFPの投与の目的は?
FFPは「血漿製剤」です。
血漿製剤を投与する目的はなんでしょうか?
血漿とは?
血液の成分をみていきます。
血液は、血球と血漿に分かれます。
血球は、さらに赤血球、白血球、血小板などに分かれます。
んで、この血漿がFFPになるイメージです!
血漿の成分は、
- 90%の水分
- 残りの大部分は血漿タンパク質
- その他に糖、脂質など
が含まれています!
この血漿タンパク質に、「血液凝固因子」が含まれます。
つまり!
FFPは「血液凝固因子を補充する目的」で投与されます。
どんな時にFFPを投与するのか?
では、どんな時にFFPが投与されるのかみていきます!
✅肝障害やDIC、大量輸血時などの場合に投与されています。
評価の指標
次に、FFPを投与してどの程度「効果があったのか」を評価するための指標をみていきます!
結論から言うと、
- PT
- APTT
- フィブリノゲン
の値をみて評価をします。
なぜこの値をみるのか?
では、次に止血の仕組みを簡単にみていきます。
止血のしくみ
➀血管が破れて出血すると、血管が収縮し傷口を小さくします。
➁つぎに血小板が傷口にあつまってきて、血栓をつくり傷口をふさぎます。
➂これが一次止血と呼ばれるものです。
ただ、これだけでは脆くて止血効果は不安定です。
そこで、血液凝固因子であるフィブリンの登場です!
④フィブリンの網の膜が血小板を覆うことで、補強になり、止血が完了します。
➄これを2次止血とよんでいます。
2次止血について
それでは、ふたたび血漿の成分に戻ります!
血漿の成分中には血漿タンパク質があり、
その血漿タンパク質の中には12種類の血液凝固因子が含まれています。
先ほどの2次止血は、複雑な過程をとおります。
こんな感じです。
ざっと目を通しただけで頭が混乱しそうですが、最終的にフィブリンになります。
PT、APTT、フィブリノゲンで評価する理由
FFP投与にあたって、PT、APTT、フィブリノゲンをみていくといいましたが、その理由をみていきましょう。
さきほどの複雑そうな図をみてください。
12種類ある血液凝固因子の番号を青色と黄色で色分けしてみました。
これは、なにを意味していると思いますか?
青色はPT、黄色はAPTTに関与しています。
さらに、フィブリンの前駆物質であるフィブリノゲンの値も採血で調べることができます!
FFP投与の際はこれらの値をみて、評価をしてみて下さい。
FFPの管理上の注意点
つづいて、FFPの管理上の注意点です!
FFPは
「Fresh(新鮮)なFrozen(凍結)したPlazma(血漿)」の略でしたよね。
Frozen、つまりFFPは凍結して保存されています。
なぜFFPは凍結されているのでしょうか?
FFPはなぜ凍結保存している?
血漿には血液凝固因子を分解する酵素がいて、
常温や冷蔵でも凝固因子の分解がすすんでしまいます。
凍結をすることで、凝固因子の分解を抑制することができるんですね!
FFPを融解する(溶かす)ための注意点
凍結しているFFPを患者さんへ投与するためには、融解する(溶かす)必要があります!
正しい方法で融解することがとても大切です。
融解は30~37度のお湯で行います。
この温度管理がとても大切です!
融解温度が高いとどうなる?
温度が高いと、凝固因子の活性が低下してしまいます。
引用:日本赤十字社社輸血マニュアル
https://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/handlingmanual1704.pdf
融解温度が45度・50度の場合、凝固因子の活性がスコーンと低下してFFPの効果が低下してしまいます。
融解温度が低い場合はどうなる?
融解温度が低いと、沈殿が生じてフィルターの目詰まりを起こしてしまうことがあります。
なので、30~37度の温度で融解することがとても大事になります!
FFPの融解方法
下図のようなFFP融解装置の使用や、その装置がなければお湯につけてときどき攪拌しながら融解していきます。
引用:日本赤十字社社輸血マニュアル(一部改正)
https://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/handlingmanual1704.pdf
FFPの融解方法は、
日本赤十字社の下記動画がとても分かりやすいので是非ご覧ください!
【日本赤十字社】FFP新鮮凍結血漿 LR「日赤」の正しい融解方法 – YouTube
FFPの間違った融解方法
それでは、
次にやってはいけない融解方法をみていきます!
➀FFPに直接お湯をかけて融解すると、蛋白変性が起こってしまいます。
➁電子レンジでチンすると、血液バックが溶けてしまいます。
これらの方法での融解はやらないようにしましょう!
FFPの融解の実施は看護師?それとも検査技師?
ちなみにですが、
私が働いている施設ではFFPの融解を臨床検査技師さんへ依頼するように院内で決まっています。
そのため、看護師がFFPを融解することはありません。
先日、Twitterで下記のように質問してみました。
教えて下さい!
【みなさんの施設で「FFPの溶解」をされるのは、臨床検査技師ですか?それとも看護師ですか?】
※私が働いてる施設では、FFP溶解は臨床検査技師さんに依頼してます。
タイムラインみてると、看護師がFFP溶解してる施設もあるようで、どちらが主流か気になった次第です!!
— ダンカン@看護師ブログ残り75記事 (@Buffetingale) January 9, 2022
744人の方に回答いただき
- 看護師が融解すると答え方が約65%
- 臨床検査技師と答え方が約25%
という結果でした。
融解後のFFPの取り扱い方法
突然ですが、みなさんに質問です!
「融解したFFPを患者さんに投与しようと病室へむかったところ、患者さんが検査で部屋にいなかった」
このような場合、融解したFFPはどのように管理すれば良いでしょうか?
再凍結すれば良いでしょうか?
答えは「×」です!
一度融解したFFPを再凍結すると凝固因子の活性が低下するため、
再凍結は「ダメ、絶対」です!
融解して、ただちに使用できないFFPは、
輸血専用の冷蔵庫に保管すれば融解後24時間以内であれば使用できます。
融解する際には、投与時間を考えて行うことが大切です!
PC(血小板製剤)
最後は、PCについてみていきます!
PCはPlatelet Concentrateの略で、「血小板製剤」のことです。
PCの投与の目的は?
PCの投与の目的は、血小板の補充です。
投与の基準は状況により様々ですが、明らかな出血がない場合はPLT(血小板数)が2万/µLを切るようであればPCの投与が必要になります。
PLTが5万/µL以上あれば基本的にPCの投与は不要です。
ただし、局所での止血が困難な手術など例外の場合があります。
例えば頭蓋内手術をする場合は
10万/µL以上維持することが望ましいなど、
まあその時々で投与の基準は様々です。
PCの管理上の注意点
それでは、PCの管理上の注意点をみていきます。
PCが病棟に届き、患者さんに投与しようと病室へむかったところ、患者さんが検査で部屋にいなかったとします。
患者さんが部屋に帰ってくるまでPCを点滴棒にかけておきました。
しかし、これはNGです!
このままの状態しておくと、血小板の機能がどんどん低下していきます。
じゃあ、どうすればよいか?
すぐ投与できないPCは振とうが必要
すぐに投与しないPCは、振とうしておかなければいけません。
なぜ振とうが必要か?解説していきます。
PCを振とうする理由
PCをそのまま放置しておくと、バック内にどんどん乳酸がたまっていきます。
乳酸がたまることでpHが低下し、その結果、血小板の機能が低下します。
PCを振とうすることで、バック内のガス交換が促進されます。
また、乳酸も拡散されることで、pHは維持され血小板の機能も保たれます。
すぐに投与できない時のPCは
「水平に振とうする!」と知っておきましょう!
PCの温度管理について
つぎに、「PCの温度管理」についてみていきます!
すぐに輸血できない場合、
RBC、FFPは輸血専用の冷蔵庫に保管ですが、
PCは冷蔵庫にいれてはいけません。
冷蔵することで、血小板の機能が低下してしまいます。
PCの保存は冷蔵ではなく、「20~24℃」での保存です。
つまり、多くの施設では室温での保存で大丈夫かと思います。
「室温&振とうする」と覚えておきましょう!
スワ―リングを確認しよう
PCを投与するまえには、必ずスワ―リングを確認しましょう!
✅スワ―リングとは?
スワ―リングがあれば正常なPCであると判断できます。
血液汚染されたPCではスワ―リングがみえませんので、そのようなPCは使用できません。
スワ―リングの確認方法は、下記の日本赤十字社の動画が分かりやすいので、是非ご覧ください。
【日本赤十字社】血小板製剤のスワーリング確認方法 – YouTube
まとめ
ここまでRBC、FFP、PCについて解説してきました。
どの輸血製剤も温度管理、外観の観察が大切になってきますので、それらを理解したうえで輸血の管理を行いましょう。
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