はぁ。。。やばいやばい
どうした?
明日CABG後の患者さんの受け持ちがついてるの。。
カルテを見たけど、よく分からなくて。
ふむふむ、何が分からないの?
LITA?AC?とか略語が多いし、結局どこの血管をバイパスしたのか分からない。OPCAB?はCABGのことなの?
分からないことが多すぎて、どこから勉強すれば良いか分からない。。
よっしゃ俺が教えてあげるよ!
(ここで良いとこ見せて、新人Nsちゃんに気に入られたいぜ)
この記事を読むと以下のことが分かります!
- グラフト(バイパス血管)の種類と特徴
- CABGの種類と特徴
それでは、一緒に学んでいきましょう!
CABGとは?
CABG:「冠動脈バイパス術」といいます。
血管が狭窄してると血流が末梢側に通らなくなる。
狭心症→心筋梗塞発症のリスクあり。
CABGは、そんな狭窄病変の末梢側にバイパス血管を吻合することで、
狭窄病変より末梢側に血流を通し、心筋虚血を防ぐんだお!
心筋梗塞や狭心症ってPCIをするイメージだけど、
CABGをすることもあるってこと!?
では、
どういう時にCABGが選択されるのか見ていこうか!
CABGの適応
CABGとPCIの適応は、日本循環器学会等のガイドラインを確認するのが最も正確だと思います。
実際には、症例ごとの病態によって治療は選択されていきます。
CABGの適応を、ざっくりと3つに分けてみたよ。
➀LAD近位部の病変
➁LMTの病変
➂3枝病変
LAD?LMT?3枝病変ってなんだっけ?
それでは、簡単に冠動脈の解剖を見ていきます!
冠動脈はRCA(右冠動脈)とLCA(左冠動脈)に分かれて、
心筋へ酸素や栄養を送ってる。
RCAは心臓の右側、LCAは心臓の左側を栄養している血管。
心臓の左側の血液の流れは、
LCA(左冠動脈)からLMT(左主冠動脈)
さらにLMTからLAD(左前行枝)、LCX(左回旋枝)に枝分かれするよ!
LAD(左前行枝)は左心室の半分を栄養しています。
LADが障害されると、左心室のポンプ機能が弱くなり、十分に血液を送り出せなくなります。
LADが障害されるということは致死的な状況になったり、心不全を起こす可能性が高い。
なので、
血行再建が確実なCABGが選択されることが多いんだ!
次に、LMT(左主冠動脈)はLAD(左前行枝)とLCX(左回旋枝)に枝分かれします。
LADは前述のように左心室の50%、LCXは左心室の25%を栄養しています。
LMTが閉塞してしまうと、左心室がほぼ機能しなくなる。。
これはやばい!
そうそう。
LMTの閉塞は致死的な状況になることを意味するんだ。
LMT病変では、PCI中の問題発生やPCI後の再狭窄で致死的な状況になりやすいので、CABGが第一選択して考えられます。
へー。LMT病変の第一選択にはCABGだけど、PCIって選択もあるんだね。医療デバイスが進歩すると、医療も進歩するんだ。
低心機能とか全身状態が悪くて、全身麻酔や高侵襲に耐えられない人はLMT病変でもPCIって選択もありそうだね。
ところで、CABGの適応になる3枝病変ってなに?
「3枝病変」は字の通り、3つの枝に病変があることです。
1回で多枝多病変を治すことができる
CABGが選択されることが多いYO!
次の項では、CABGで使われるグラフト(バイパス血管)をみていきます!
グラフト(バイパス血管)の種類と特徴
バイパスする血管ってどんなものなの?
人工血管とか使うの?
冠動脈の太さって1~2㎜とめちゃくちゃ細いの。
なので、CABGで使う人工血管ってないんだ。
CABGでは、身体の一部から採取した血管をグラフト(バイパス血管)として使用します。
✅CABGに使われる主な血管は以下です。
- 内胸動脈(ITA)
- 橈骨動脈(RA)
- 右胃大網動脈(RGEA)
- 大伏在静脈(SVG) ←ここだけ静脈!
どんな血管?どんな特徴があるの?
お任せ下さい!一つずつ見ていこう!!
内胸動脈(ITA)
内胸動脈ってどこだ?
内胸動脈(ITA)は、鎖骨下動脈(SCA)から分枝している血管です。
右側の内胸動脈はRITA、左側の内胸動脈をLITAと言います。
ちなみに読み方はRITAは「ライタ」、LITAは「リタ」と言うお!
内胸動脈(ITA)は、通常「有茎グラフト」として使用されます。
有茎グラフト!?
有形グラフトは、一側だけ切り離して使うバイパス血管のこと
in situ graft(インサイチュグラフト)と表記されることもあるよ!
内胸動脈(ITA)の特徴
- 弾性血管のため動脈硬化の進行が遅く、長期開存が期待できる。
- 10年開存率は約90%と言われており、どのグラフトよりも開存率が優れている。
心筋酸素需要に対する血管拡張の応答も良く、血流が得られやすいのもGOOD!!
内胸動脈(ITA)は、肋間動脈と吻合して胸壁を栄養したり、縦隔にも分布する枝を出しています。
基本的には内胸動脈(ITA)を採取しても別ルートで血流は補われるので問題ないです。しかし、糖尿病など末梢血流が悪い場合は、胸部正中感染や縦隔炎のリスクがあるので要注意です。
内胸動脈(ITA)の標的血管
✅LITAは、有茎グラフトとしてLADバイパスの第一選択として使用されます。
LAD以外には、Dx(LAD対角枝)、LCXに使用されることが多いです(あくまで目安)。
✅RITAは、有茎グラフトとしてRCA♯1~3、LAD、Dx、LCXに使用されます(あくまで目安)。
RITAは、グラフト延長のために遊離グラフトとして、LITA-RITAとして使用することがあるよ!
遊離グラフト!?
遊離グラフトは、血管から完全に分離した血管で、バイパスしたい箇所に自由に吻合できるようになります。
バイパスしたい箇所が遠い場合は、グラフト延長のために遊離グラフトを有茎グラフトに吻合します。
これをコンポジット(複合)グラフトと言います!
LITA-RITAによるコンポジットグラフトは開存率を低下させることなく到達距離が得られます。
開存率の良い内胸動脈(ITA)を使ってるからか!
そうそう!
ただし、両側の内胸動脈(ITA)を使用する際は、縦隔炎リスクが増加するってことも知っておいてね。
橈骨動脈(RA)
橈骨動脈は分かる!よくAラインを留置している血管よね!
橈骨動脈(RA)を採取する際は、術前にアレンテストが必要になるよ!
アレンテスト!?
橈骨動脈(RA)と尺骨動脈(UA)はつながっていて、通常はどちらかが詰まっても手は虚血しないんだ。
まれーに、この短絡が存在しない人がいるんよ。
それを事前に確認する血流テストが「アレンテスト」だよ!
橈骨動脈(RA)の特徴
- 内腔が大きく、壁厚もしっかりあるため、大動脈に吻合しやすい。
- 約17~20㎝と長く、遊離グラフトとしてどの冠動脈領域にも到達可能。
バイパス術後の開存率は、10年で50~90%と言われていて、
内胸動脈(ITA)と大伏在静脈(SVG)の中間のポジションにあるグラフトになるお!(SVGは後述するお!)
- 周術期のスパスムを起こしやすい(術中から術後にCa拮抗薬の投与が必要)
- 術後手の痺れ・感覚異常が出現することあるが数か月で改善する。
- 冠動脈血流が70%以上維持されている場合は、競合血流により開存率低下する。
競合血流って?
バイパス先の冠血流がある程度保たれている場合、冠動脈の血流とグラフトからの血流がぶつかることがある。
これを「競合血流」というんだ。
ちなみに英語では、Competitive flowと言うんだぜ
(うぉー決まったー!俺ってば、かっこよすぎるぜ!)
ふーん(英語の発音悪すぎだろ。。ださ)
橈骨動脈(RA)の標的血管
橈骨動脈(RA)は、遊離グラフトとしてどの冠動脈領域にも到達可能です。
大動脈(Aorta)ー冠動脈(Coronary artery)をバイパスするA-Cバイパスとして使用されます。
他には、
バイパスしたい箇所が遠い場合は、グラフト延長のために複合グラフトとしても使用されるお!
右胃大網動脈(RGEA)
右胃大網動脈(RGEA)って、マジでどこ!?
胃の大湾に沿って通っている血管。
あまり聞きなれない血管だよね!
開存率は約70~80%で内胸動脈(ITA)より劣っているが、
第3の動脈グラフトとして活用されています。
右胃大網動脈(RGEA)の特徴
- 有茎グラフト
- 約20㎝のグラフト採取可能
右冠動脈(RCA)領域に対して、有茎グラフトとして使用されるよ!
- 内胸動脈(ITA)より伸縮性があり、血管攣縮をきたしやすい
- 胃を灌流する血管であり、消化器症状に注意が必要
- 橈骨動脈(RA)同様、バイパス先の冠血流が中等度程度保たれている場合は、血流競合により、グラフト閉塞のリスク高くなる
出た!血流競合。。
RA同様に高度狭窄部位に使用します。
右胃大網動脈(RGEA)の標的血管
RCA♯1~4と、RCAの動脈バイパスとして使用されることが多いです。
採取距離によっては、LAD、LCXまで使用されることもあるよ!
大伏在静脈(SVG)
大伏在静脈(SVG)は、CABGのバイパス血管で唯一の静脈です!
✔下腿から大腿の内側を走行する表在静脈
✔30㎝以上の遊離グラフトが容易に採取できる
大伏在静脈(SVG)の特徴
- 胸部術野を妨げずに採取できるため、緊急手術時の第一選択
- SVG以外の深部大腿静脈により、グラフト採取したことでの機能障害を認めない
- 静脈グラフトであり、長期開存性には優れていない
- 10年開存率は50~60%
どうして静脈グラフトは長期開存に優れてないの?
動脈圧>静脈圧。
静脈グラフトに長期的に動脈圧がかかると、血管がつぶれてしまうんだ。
そのため、静脈グラフトは長期開存性には優れていないんだ。
大伏在静脈(SVG)の標的血管
前述した橈骨動脈(RA)と同様、遊離グラフトとして使用され、どの冠動脈領域にも到達可能です。
A-CバイパスやLITA‐SVGの複合グラフトとして使用されます。
次の項ではCABGの種類を解説するよ!
CABGの種類
CABGって何種類もやり方があるの?
そうそう!
大きく分けると2種類。
人工心肺を使う=on pump CABG
人工心肺を使わない=off pump CABG
に分けられるYO!
人工心肺!?
人工心肺の注意点を知りたい方は下記の記事を要チェケ!
体外循環が身体へ及ぼす影響 ~人工心肺の注意点を理解しよう~
まずは人工心肺を使用するon pump CABGからみていきます!
on pump CABG
on pump CABGは、人工心肺を使用するCABGです。
on pump CABGは
ポンプ(人工心肺)をONにするCABG。
ONCAB(オンキャブ)とも略されるよ!
on pump CABGの術式は、2種類に分けられます。
- on pump arrest CABG(心停止)
- on pump beating CABG(心拍動下)
心臓を止めてopeするパターンと心臓を動かしたままopeするパターンがあるのか!
そうそう!ひとつずつ解説していくね!
on pump arrest CABG(心停止)
on pump arrest CABGは、人工心肺と心筋保護液を使用し、心停止下でCABGを行います。
その分、侵襲が大きくなるんだよね。
循環が不安定な時や、心拍動下で心臓の固定・露出が行えない時に選択されるよ。
- 心停止させて術操作を行うため、冠動脈吻合の際に、ていねいにかつ安全に行うことが可能。
- ハイリスク例において、off pump CABGと比べて早期死亡が減少する。
- 人工心肺の合併症(出血、免疫低下による易感染、etc)
- 大動脈の遮断に伴う塞栓症、特に脳梗塞のリスクあり
- 心停止下で行うので、心機能が悪い人は特に心不全に注意
人工心肺の合併症の詳細は下記記事を参照下さい!
体外循環が身体へ及ぼす影響 ~人工心肺の注意点を理解しよう~
on pump beating CABG(心拍動下)
on pump beating CABGは、人工心肺を使用するが心臓を止めないCABGです。
後述するoff pump CABGの手術中に循環不全に陥った時のバックアップとして準備したり、実際に使用したりするよ。
また、大動脈の高度石灰化により大動脈クランプによるリスクが高い場合や、再手術例で癒着を剥離する場合に行われます。
- 人工心肺の合併症(ここはon pump arrest CABGと同様だお)
- 心拍動下のため、術者の高い技術と豊富な経験が必要
off pump CABG
off pump CABGは、人工心肺を使用しないCABGです。
off pump CABGは、
ポンプ(人工心肺)をOFFするCABG。
OPCAB(オプキャブ)とも略されるよ!
人工心肺を使用せず、心拍動させたまま、スタビライザーを使用して固定しバイパスを行います。
スタビライザー?
前壁以外へのバイパスを行う場合は、術野確保のためにスタビライザーという器具で心尖部を吸着させて、心臓を垂直に持ち上げるんだ。
引用元:心臓外科手術の術式別ケア ビジュアルガイド 監修宮本信二 メディカ出版 P63
このスタビライザーで心臓を垂直に持ち上げることを
「脱転」と言います。
脱転の時は、静脈抵抗が増えて、流入する血液量が低下するので血圧低下を起こしやすいです。
心臓の裏側の冠動脈にバイパス血管を吻合する際には、
心嚢の最深部に糸をかけて引き上げたり(リマ・スーチャー)
ハートポジショナーを使用します。
引用元:心臓外科手術の術式別ケア ビジュアルガイド 監修宮本信二 メディカ出版 P63
OPCABではバイパス1吻合ごとに、ドプラ血流計でグラフトの評価を行い、血流不良の際は再吻合を行います。
- 人工心肺による合併症を回避できる
- ONCABに比べて、出血量が少ない、呼吸器合併症が少ない、脳合併症が少ない、回復が早い、費用が安いなど多くの長所がある
ONCABに比べて、人工呼吸期間、ICUおよび入院期間が短い、血液製剤の使用が少ないなどメリット多数。
人工心肺は身体への侵襲が大きいっすわ!
- 心臓の後ろ側へ血管吻合する際に脱転を行うため、心臓ポンプ機能が維持できない場合がある
- 心拍動下のため、術者の高い技術と豊富な経験が必要
まとめ
あれ、術後の看護のポイントは?
ちょっとボリュームが多くなったので、パート②の記事で解説します!
今回の記事では
- グラフト(バイパス血管)の種類と特徴
- CABGの術式の特徴
が、なんとなくイメージできればOKです。
「ITAはバイパス血管の中で詰まりにくい、左右のITAを使う場合、DM患者は縦隔炎や創部感染のリスクあるから注意しよう!ONCABは人工心肺の合併症も抑えて術後注意しなきゃ!」
みたいな感じでイメージできれば、
次回のパート②の看護のポイントがより理解しやすいと思います。
ITA?ONCAB?はてなんだっけ?
大丈夫です!
すきま時間に、流し読みするだけでもイメージできると思うので是非ご活用下さい。
それでは、CABGパート➁の記事はこちら↓
に続きます。
参考文献は以下
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