はぁ。。
どうした?浮かない顔してるよ?
明日、初めてPCPS装着している患者さんを受け持つことになったのよ。。
マジ?すごいじゃん!
それが、やばいんよ。先輩から勉強してくるように言われたけど、全然分かんない。。
PCPS装着中の看護のポイント教えてくれへん?
おぉええで!
ほな、一緒に勉強しようか!
同期よ!ありがとう!
おなしゃす!!
今回の記事を読めば
- PCPSってなに?
- 流量?回転数?人工肺?
- 看護するためのPCPS回路の観察ポイント
が、分かるようになります。
それでは、さっそく始めていきましょう!
PCPSとは?
PCPSは、「経皮的心肺補助装置」と言われるよ!
経皮的心肺補助装置?
「経皮的」とは、皮膚の上から針を刺してカニューレを入れる。
「心肺補助」とは、そのカニューレから血液(静脈血)を引いて、人工肺でガス交換をする。ガス交換後の血液(動脈血)をカニューレから身体に戻す。
経皮的に心臓と肺の補助をしてるから、「経皮的心肺補助装置」と言うんだよ!
んー、分かったような分からないような。。
すまねー。
言葉だと分かりにくいか?
んじゃ、カンタンなPCPSの図をみながら説明するわな!
助かります!(同期マジ優しい!神!)
PCPSの仕組み
下の図を見て!
右大腿静脈から、遠心ポンプで「ぐわー」って血液を引いて(脱血)、人工肺でガス交換する。ガス交換後の血液を左大腿動脈から身体に戻す(送血)。
ちなみに
- 脱血管の先端は右心房
- 送血管の先端は大腿動脈
に位置します。
あー、そういうことか!
ざっくり言うとこんな感じ!
コントローラーで補助流量を調整したり、ブレンダーでFiO2や酸素流量を調整してるんだけど、それは後述するお!
つぎにPCPSの適応と禁忌をみていきましょう!
適応と禁忌
ちなみに明日受け持つ患者さんは、
なぜPCPS管理してるの?
えーっと、、なんでだっけ。。開心術後の人なんだけど。
えーっと。。わかんね(汗)。。
先輩に聞かれて、その返答は激オコされるよ(苦笑)
じゃあ、PCPSの適応を一緒にみていこう!
はいっ!!
(明日のフォローついてくれる先輩怖いんだー)
PCPSの適応は、各ガイドライン(日本循環器学会・日本集中治療医学会・ELSO)で明記されていますが、
一言で言うと、「循環が保てない場合」に適応となります。
適応例をあげると、
- 心肺停止(ACSでPCI等の治療するまでの繋ぎ)
- 心原性ショック(難治性VFや開心術後のLOSの時など)
- 低体温による循環不全
- 重度肺塞栓によるショックetc
循環作動薬やIABP使っても血圧が維持できない。。このままだとやばい。。っていう場合には、迅速にPCPSを開始する必要があるんだ。
ここで重要なことは、「PCPSは原疾患を治療するためのものではない」ということ。
AMIに対してはPCIをするための補助、開心術後のLOSでは心機能が改善してくるまでの補助として行います。
あくまでPCPSの役割は、原疾患の治療を行うために必要な循環の補助です。
明日受け持つ患者さんは、開心術後のLOSで心機能が改善するまでの補助でPCPSをつけてるってことか。。
そういうことだね!
次にPCPSの禁忌についてみていきましょう!
- 大動脈解離や大動脈瘤
- 重度のAR(大動脈閉鎖不全)
- ASO(閉塞性動脈硬化症)etc
へー。PCPSの禁忌って結構あるんだねー。
いや、PCPSは絶対的な禁忌はないんだよ。禁忌事項に当てはまっても導入するケースは多々あるんだ。
ん?どういうこと?上の禁忌事項は!?
PCPSは、循環作動薬やIABP使っても「循環が保てない時」に開始します。
つまり、「PCPSを回さないと死んでしまう状態」であると言えます。
そのような状況なので、上にあげた禁忌事項があってもPCPSを開始することが多々あります。そのため絶対的禁忌ではなく、「相対的禁忌」と表現されます。
「相対的禁忌」の場合にPCPSを回すということは、その分リスクが高くなるということか。。
そうそう!
なぜ「相対的禁忌」なのか?
PCPS管理をする上で、その理由を理解しておくことが必要だね。
相対的禁忌の理由
ここでは、なぜ以下の項目が禁忌(相対的)なのか?みていきます
おなしゃす!!
✅PCPSの相対的禁忌
- 大動脈解離や大動脈瘤
- 重度のAR(大動脈閉鎖不全)
- ASO(閉塞性動脈硬化症)etc
大動脈解離や大動脈瘤は、PCPS送血によって病態の悪化が懸念されるよ。。
重度のARは、大動脈弁が閉じないので常にPCPSからの送血の負荷が左室にかかる…
ASOは、足の動脈がメチャ細い病態。
PCPSのカニューレは太いから、下肢虚血を起こすリスクが高いのよ。
ほえぇぇ。。
上記はあくまで一例だけど、相対的禁忌がある患者さんにPCPSを行う際には、起こりうるリスクを考えて観察していきたいね!
おす!!(こいつ、ほんま同期か?ワイとの知識量の差がパねー…)
✅一言メモ
それでは、PCPS回路の観察ポイントをみていきましょう!
PCPS回路の観察ポイント
PCPSかぁ。。実際に自分が安全にみれる自信がないお。。
大丈夫!PCPSでやってることは意外とシンプルだよ!押さえておくべきポイントを理解しておこう!
お願いします!!(ほんま頼りになるな。。)
じゃあ、
まずはPCPSで行っていることをみていくよ!
まずはPCPSを知ろう!
まず下の図をみて!
たしか、最初の方にも出てきたPCPSの図だね!
➀右大腿静脈から、遠心ポンプで「ぐわー」って血液を引く(脱血)
➁人工肺でガス交換する
➂ガス交換後の血液を左大腿動脈から身体に戻す(送血)
だったよね?
そうそう、大まかにはそんな感じ!
このPCPSは、患者さんの状態に合わせて医師が設定するんだ!
PCPS回路を少し細かくみていくよ!
補助流量と回転数と遠心ポンプってなに?
PCPSは、患者さんの身体から血液を引いて、人工肺でガス交換し、再び血液を身体に戻す。
その速さを決めているのが、「コントローラー」だお!
実際には、下のようなものがついています!
ダイヤルを回して、回転数を設定して、回転数に合わせて補助流量が決まります。患者さんの状態に合わせて、医師がこの補助流量を調整します。
この流量が、流れる血液の速さになります。
流量は2.0L/min以上は必要
ここで注意してほしいことは、
「補助流量は2.0L/min以上は必要」ということだよ!
なんで?
流れる血液が遅いと
PCPS回路内に血栓ができてしまうんだ。。
え!?そうなの?
最近のPCPS回路はヘパリンコーティングされていたり、回路内に血栓できないように抗凝固薬を投与してたりするけど、一番血栓予防は「PCPS回路内の血液の流れの速さ」なんだ!
患者さんの状態が良くなってくると、PCPSウィーニングのため流量を減らしていきます。その段階でも、血栓予防のために流量は2.0/minは確保されることが多いです。
血栓予防のために流量は2.0L/min以上の確保は必要なんだね!メモメモッ!
回転数は3000以下を目安に管理
もう一つ注意点があるんだ!
なになに?
「溶血予防のために回転数は3000以下を目安に管理する」ということだよ!
回転数ってなんだっけ?
下のイラストをみて!
PCPSは、コントローラーで回転数を設定し、回転数に合わせて補助流量が決まるって話をしたよね!
あー、そうだった(汗)
この回転数っていうのは、「遠心ポンプの回転数」のことなんだ!
遠心ポンプが回りすぎと、ポンプ内に熱をもってしまう。この熱のために血液が溶血を起こしてしまうんだ…
なるほど。回転数が多すぎると溶血を起こしてしまう。そのため「回転数は3000以下を目安に管理」するんだね!
回転数が3000以上じゃないと流量が維持できないとなると、そもそも何か異常が起こっていると考えた方が良いお!
「脱水などで、そもそもの血液量が足りないのか?」「送・脱血管が曲がっていないか?」など観察することが大切だよ!
ちなみに、十分に脱血できていない時は、脱血回路が振動します。
回路の血管壁の先当たりや、回路の屈曲、脱水などで起こります。
この振動が続くと、溶血や気泡発生のリスク高くなるため、速やかに対応する必要があります。
ちなみに気泡は、十分に脱血できないことで脱血管が陰圧になって発生する。このことをキャビテーションと言うお!(覚えなくてよいお)
また、遠心ポンプがとまってしまうことがあります。
え、こわ。。
前兆としては、カタカタ言い出すみたいだよ!
(実際聞いたことないお)
このような異音の発生は、ポンプ内の血栓形成が原因のことが多いようです。
そのため、速やかに医師へ報告し、回路交換を検討します。
人工肺は何してる?
つぎにPCPS回路内の「人工肺」についてみていきます!
脱血した静脈は、人工肺を通り、酸素化されて動脈血となり送血されます。
人工肺の設定は、「ブレンダー」でされています。
下のイラストが「ブレンダー」です!
脱血した静脈血に対して、FiO2で酸素化し、流量でCO2の調整を行うんだ。
「流量でCO2の調整を行う」ってどーいうこと?
動脈血のCO2、つまりPaCO2が高い場合は流量を上げます。流量を上げてCO2を飛ばす感じ。
人工呼吸器で言う「分時換気量」をイメージしてみて!CO2を飛ばすために換気量を増やすんだ。
なので、流量を下げるとCO2は上昇するよ。
へー!
「酸素はFiO2で、二酸化炭素は流量で調整」っと。
メモメモ!
血栓ないか?観察が大切
人工肺にも血栓ができるので、血栓できてないか?
観察が必要だよ!
えー、、人工肺にも血栓できるのか。
PCPS回路はほんと血栓の観察が必要なんだね。。
そうそう!
人工肺以外でも、「遠心ポンプ」「流量コネクターの接続部」「採血ポートなど枝分かれしている場所」にできやすいので要注意よ。
血栓の有無は、ペンライトで照らして確認する。
もしあれば、医師へ報告しよう!
経過みるよう指示あれば、血栓は増えてきてないかみるためにマーキングしるよ!
回路の色の観察が大事
人工肺は、長く使用してると血栓やたんぱく質がこびりついて、ガス交換能が低下してきます。
そこで!送血管の色を観察することが大切になってくるお!
え?送血管がこんな色になるの(汗)?
イラストはイメージなので大げさに書いてるけど、
送血管の赤色の動脈血が、脱血側のような静脈血に近くなってきたら要注意です!
発見したらどうすればいい(汗)!?
すぐに医師へ報告し、
PCPS回路のABGを確認してもらおう。
施設よって違いますが、FiO2 1.0でPaO2が200mmHg未満であれば、人工肺が十分機能していないとし、回路の交換が必要になるかもしれません。
プラズマリークとウェットラングに注意
ん!?なんて言った??
✅プラズマリークとは、血漿が漏れ出すこと。
人工肺を長く使ってると、膜へたんぱく質がこびりついてくる。
それによってoutポートから漿液性で泡立った水滴(血漿)が出てくる。
これが見られたら回路交換が必要になってくるので、すみやかに医師へ報告になります
ちなみに、血漿は英語で「プラズマ」と言うよ。
なるほど。
血漿が漏れ出てくるから、プラズマリークと言うのか
✅ウェットラングとは、室温と回路内の温度差による結露がみられること。
outポートから透明な水滴がでてくるよ!
これも回路交換になるの(汗)?
いや、これは結露を飛ばしたら解決するよ!
医師へ報告し、数分間ガス流量を10L/minにあげて結露とばしてもらおう。ちなみにこれを「ガスフラッシュ」と呼んだりするよ!
「先生、ウェットラングが見られているのでガスフラッシュお願いします」的な感じか(笑)!
ガスフラッシュしたあとは、必ず流量を戻すこと忘れないでね!そのままだと、CO2が低下しすぎてしまうので。。
はいっ!!
続きは、次回記事(パート②)へ続きます
少し長くなってきたので、今回はここまでとします。
「PCPS(VA-ECMO)回路の注意点」がなんとなく分かった気になれば幸いです。
✅↓のパート2の記事では、
- ミキシングゾーンとは?
- SvO2って?
- スワンガンツカテーテルの心拍出量がアテにならない理由
など書いています。
それでは、パート2の下記もぜひご覧ください!
✅参考文献
コメント
ガスフラッシュをわざわざ医師にやってもらうのはびっくりです。
うちは2時間おきぐらいにルーチンで看護師がやっています。
くまさん コメントありがとうございます。当院は医師にやってもらうようになってますが(以前流量を戻し忘れたインシデントがあったようで。。)、今回のブログ記事作成にあたり看護師がガスフラッシュを行っている施設も多いことを知りました。
そうなんですね。
なんか先生のほうが戻し忘れそうな気もします。
うちはタイマーかけて戻し忘れ予防しています。
くまさん
他施設の管理方法を聞けてとても勉強になります。
ありがとうございます。