今回は「INTENSIVIST 心臓血管外科」を紹介します!
INTENSIVIST(インテンシヴィスト)とは?
「世界標準の集中治療を誰にでも分かりやすく」をコンセプトに発足されたJSEPTIC(日本集中治療教育研究会)の活動をベースに、年4回発行されている季刊誌です。
本誌は2009年から発行されており、各号それぞれテーマが決まっています。
一部例をあげると、「輸液・ボリューム管理」「人工呼吸器」「酸素療法」「PICS 集中治療後症候群」「管・ドレーン」「脳卒中」「ARDS」「ECMO」etc
2021年には、「COVID-19(ICUにおけるパンデミック効果)」のテーマで発行されるなど、トレンドとなる内容がタイムリーに特集されています。
今回はINTENSIVISTの心臓血管外科編を紹介します!
なんと心臓血管外科は前編・後編に分かれて特集されています。
本書をオススメする人
個人的には、
INTENSIVISTはICUで働く中堅以降のナースにオススメです(ここでいう中堅とは、リーダーをし始めた人と仮定)
本書は、心外患者の術後管理を行っているナースの疑問点を解決してくれる本だと思います。
中堅以降のナースにオススメとは言いましたが、一つでも興味ある内容があれば学ぶべきタイミングだとも思います。新人さんや心外術後管理の経験の少ない方でも興味があればすごくためになる内容だと思います。ただし、本書の内容を難しく感じ挫折する可能性は多いにありそうです。
経験の少ない方は、まずは以下の本で基礎を学び
心臓血管外科のオススメ参考書(本)はこれ! ~心外術後の受け持ちはじめた看護師編~
レベルアップしたい際に「INTENSIVIST」を読むことをオススメします。
それでは、INTENSIVIST心臓血管外科の前編・後編の特徴を順に紹介していきます!
前編
前編は、「心臓血管外科の基本」と「各術式の特徴」をメインに書かれています。
✅心臓血管外科の基本では
- 体外循環
- 心筋保護
- 低体温循環停止と脳保護
- 胸骨正中切開とMICSアプローチの違い
が書かれています。
胸骨正中切開の項目では、
胸骨正中切開後は、胸郭の分断により呼吸機能が低下するほか、先に述べた疼痛や胸部不快感などにより呼吸は浅くなる。術後1日目の平均肺活量は術前の48%に低下し、術後1週間でも術前の72%程度しか回復しない。(中略)心臓リハビリテーションによって、正中切開後の浅呼吸や機能的死腔の増加を改善し、換気効率を上げることができる。
引用元:INTENSIVIST 心臓血管外科前編 P703 メディカル・サイエンス・インターナショナル 2016
上記のように、どの項目も文献に基づいて数値を用いて記載されており、とても勉強になります。
✅各術式の特徴では
- 大動脈弁手術
- 経カテーテル的大動脈弁置換術
- 僧帽弁手術
- 三尖弁手術
- メイズ手術
- 感染性心内膜炎に対する手術適応とタイミング
- 冠動脈バイパス術
- 急性心筋梗塞後の機械的合併症に対する外科手術
- 大動脈弁基部置換術、自己弁温存基部置換術
- 上行大動脈置換術
- 弓部大動脈置換術
- 下行大動脈置換術、胸腹部大動脈置換術
- ステントグラフト内挿術
- 急性大動脈解離の手術
- 左室形成術
- 補助人工心臓(VAD)植え込み術
- 機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する外科手術の適応とタイミング
上記のように、各術式の特徴や合併症について網羅的にまとめられています。
また、コラムとして
- 大動脈弁置換術後にエコーで見るべきポイント
- 僧帽弁手術後にエコーで見るべきポイント
が書かれています。
個人的にはエコーの所見や医師記録から必要な情報を読み取る力が養われた気がします。
その他、連載コーナーとして、「VA ECMOとIABPの併用効果に関する臨床的エビデンス」も書かれており、大満足な一冊となっています。
後編
個人的には、
「後編」は前編よりもさらに満足度の高い内容でした!
目次は以下の通りです。
✅周術期管理
- リスク評価と術前管理(多様化する術式に対するリスク評価とアップデート)
- 術後の輸液管理(維持すべき循環血漿量を「範囲」としてイメージする)
- ペーシング(心外膜ペーシングの使用・管理方法と注意点)
- ドレーン管理(適切な管理方法とピットフォール)
- 胸骨正中切開後の心肺蘇生(その特殊性と再開胸を含めた対応)
- 慢性透析患者の周術期管理(透析患者の特殊性と周術期に注意すべきポイント)
- 薬物の適応とcontroversyその1(冠血管拡張薬、フロセミド、カルペリチド、トルバプタン)
- 薬物の適応とcontroversyその2(シベレスタット、チオペンタール、ステロイドに関するシステマチックレビュー)
- 心臓血管外科術後リハビリテーション(患者の特徴や疾患特異性、術式別特徴を把握したプログラムで介入)
術後の輸液管理の項目では
SIRSに伴う血管拡張は通常6~8時間程度で終息し、炎症反応は通常12~24時間以内に終息する。また最大で約10~15%とされる人工心肺による心機能低下は手術後4~6時間程度持続するが、その後、比較的すみやかに術前のパフォーマンスまで回復するとされている。ただし、EF<35%、人工心肺時間>120分、低体温(<35℃)、周術期心筋虚血などの危険因子がある症例では、心機能低下の程度もより重度で、時に永続的に残存し、回復するとしてもより長い経過を辿ることがあるので注意しなくてはならない。
引用元:INTENSIVIST 心臓血管外科後編 P27 メディカル・サイエンス・インターナショナル 2016
と書かれています。
心臓手術による生体侵襲への理解は、術後の輸液管理を考えていく上で必要な知識です。
心外術直後は、循環動態が不安定であり迅速な対応が必要です。起こりうることを予測し対応する力は、術直後を管理するICUナースに求めれます。
また、上記の引用文より、EFや術中の人工心肺時間、体温などの情報を把握することは、術後管理していく際に必要な情報であることを学ぶことができました。
✅術後合併症
- 心臓血管外科術後のショック(LOSを中心に)
- LVAD時代の右心不全と肺高血圧症(米国からの知見)
- 不整脈(細やかな対応が求められる術後不整脈の予防と治療)
- 縦隔出血(診断、治療、再開胸の適応とタイミング)
- 縦隔炎(早期の診断・治療が大切)
- 脳合併症(患者の危険因子評価に基づく総合的な予防戦略を)
- 対麻痺(遅発性対麻痺への対応と、脊髄ドレナージ合併症予防の時代へ)
- 非閉塞性腸管膜虚血(NOMI プロトコルを作成し早期治療を目指す)
どの項目も文献に基づいて書かれており、気になる箇所は文献検索をして深掘りして学ぶことができそうです。
また後編の最後の項目では、
「心臓血管外科周術期におけるアドバンス・ケア・プランニング(望まない術後経過に適切に対応するために)」
をテーマに書かれています。
「Jonsenの4分割法」や「各ガイドラインの終末期の定義」などを用いて、症例をもとに丁寧に解説されています。
本書の内容は、どの項目も心臓血管術後に起こりうることであり、過去の自分の経験と照らし合わせながら学ぶことで、とても学びになりました。
最後に
改めて「INTENSIVIST」のおさらいです。
INTENSIVISTは、「世界標準の集中治療を誰にでも分かりやすく」をコンセプトに発足されたJSEPTIC(日本集中治療教育研究会)の活動をベースに、年4回発行されている季刊誌です。
文献をもとにエビデンスを明示しながら書かれており、とても勉強になります。
なかなか看護雑誌には書かれていない医学的知識が豊富に書かれており、レベルアップしたいと考えている方にオススメです。
今回は心臓血管外科を紹介しましたが、他にもたくさんのテーマで書かれています。
集中治療領域で働いている方は、興味のあるテーマを読んでみるのも良いかもしれません。
ただし、一冊の値段が約5000円と高いのが個人的にはネックです。。
コツコツとお小遣いを貯めて、興味あるテーマの本は読んでいこうと思います(笑)
PS:次回読みたいテーマ
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