やばいやばい
どした?
心臓外科OP後の受けもちに向けて、明日までに先輩Nsに課題出さないといけないの。
課題は「OP中に体外循環装置を使用した患者のOP後の看護の注意点」だって。はあ、今日は徹夜かな。。
ほうほう。ほな、俺が教えてやんよ!
(ここでかっこいいとこを見せて、新人Nsちゃんに気に入られたいぜ)
ほんと?教えてほしい!(こいつほんまに知っとんか?)
体外循環とは
心臓血管外科手術の多くは、人工心肺(CPB)を使用します。
人工心肺は、➀「脱血管」で静脈血を体外に抜き取り、➁「人工肺」で酸素化した後、➂「送血管」にて動脈血を体に戻します。
このことを体外循環といいます。
上の図の他に、左心室の血液を吸引する「ベント」っての挿入されてるんだ。弁当じゃないぜ。
ベント?なんのために?(弁当なんか言うからお腹すいてきた)
左心室の血液を吸引することで、
➀術中の視野を確保する、➁左心室に血が溜まることでの過伸展を防ぐ➂人工心肺離脱時のエアー抜きをする。
この3つの目的があるお!
術中は出血が多い。
血液を捨てるんじゃなくて、ベントで血液を回収して再利用するんだ!
へー(弁当じゃなくて、ベントね。それにしても、はらへったー)
- 脱血は2パターンある。
- ➀右房のみの1本脱血
- ➁上大静脈+下大静脈の2本脱血
- 右房を切開するOPの場合は➁、それ以外は①を選択される場合が多い
人工心肺の目的
要するに人工心肺って、人工の心臓と肺の代わりってことかー!
まあ、文字の通りだとそうだな。
人工心肺の機能は主に4つ
➀酸素化と二酸化炭素の排出 ➁血液の循環 ➂全身の冷却と加温
④血液を吸引して視野の確保
つまりは、
心臓と肺の代わり、体温調整、血を吸って手術しやすくする。
こんなとこかな。
心臓血管OPでは、
OP操作のために心臓停止させたり、大動脈の血流を遮断する必要があります。
心停止や血流遮断中の生体機能を維持するために、人工心肺を使用します。
体外循環後の看護のポイント
人工心肺ってすごいんだね!あー、勉強になった!
ありがとう。弁当食べてくる!
ちょいちょーい!ここからが本番よ!
人工心肺って身体に凄く負担がかかるものなの。どのような影響が起こるのか理解して看護することが大切だよ。
先輩から課題でてるんでしょ?
も、もちろん、じょうだんよ!(やばー、課題のこと忘れてた)
術後の看護のポイント教えて下さい!
体外循環は全身に様々な影響を及ぼします。
体外循環後の看護ポイントを以下の6項目に分けて解説していきます。
- 出血に注意
- 塞栓に注意
- アシドーシスに注意
- 電解質に注意
- 心不全に注意
- 大動脈解離に注意
よし、メモメモ!(前田裕二ばりのメモ魔になりたい)
出血に注意!
まずは出血に注意しよう。その理由をひとつずつみていこう!
理由➀ヘパリン化
体外循環は文字通り、「体の外」に血液を出す。
その血液は人工心肺回路を通って、体の中に血液が戻る。
体の外に出た血液はどうなると思う?
あ!固まる?
そう!
人工心肺回路内で血が固まると、体外循環ができなくなるよね!
その予防のためにヘパリンを投与するんだ。
それを「ヘパリン化」というんだぜ。
ヘパリン化したままだと出血しやすい状態になっています。
そのため、体外循環後にはプロタミン硫酸塩を投与しヘパリン化の中和を行います。
通常はプロタミン投与で、凝固と止血が得られます。
しかし、
凝固系が一気に更新し凝固因子が枯渇すると、
後述する血小板減少や血液希釈とも重なって、出血傾向となります。
理由➁低体温
体外循環時は、通常は低体温で管理します。
低体温にすることで、代謝を抑制させ、生体の酸素消費量を抑えることができます。
30℃では酸素消費量は約50%
15℃では30分間の脳循環停止が可能
と言われているお!
すごいね!低体温!
もちろん、副作用もあるんだよ
低体温にすることで、
血小板活性の抑制、凝固因子活性の抑制が起こります。
つまり、低体温は易出血状態になるってことね
理由➂血液希釈
人工心肺回路のプライミングにより、
1500ml前後のリンゲル液を中心とした輸液が体内に入ります。
そのため、血液は希釈されます。
プライミングの液が体内に入ることによって、血液が薄まるイメージだね
血液が希釈されると、
血小板が相対的に減少します。
血小板が少ないと、出血しやすくなる。
つまり易出血状態だ!(ドヤッ)
体外循環中から直後にかけては、凝固系・線溶系ともに亢進してるけど、通常は術後2~3日頃より正常化していくよ。
塞栓に注意!
プラークや空気が飛んで血管が詰まることを「塞栓」と言います。
塞栓には、「微小塞栓」と「空気塞栓」の2種類あるよ!
微小塞栓とは
血管壁にあるプラークが飛んで、その先の血管が詰まることです。
特に
➀上行大動脈から➁弓部分枝の粥状硬化が高度の場合は、
OP操作により脳梗塞や腹部臓器の梗塞を起こすリスクがあります。
上行大動脈から送血管の挿入が危険な場合は、
送血を大腿動脈や右鎖骨動脈から行うことがあるよ!
空気塞栓とは
心腔内に残った空気が心拍出の再開とともに送られた場合や、
人工心肺から誤って空気を送った場合に起こります。
なので
OP後は脳や腹部臓器、下肢の動脈が血栓で詰まっていないか?
それぞれ観察していく必要があります。
脳梗塞の観察項目としては、
麻痺や瞳孔不同がでてないか?
鎮静がマイルドであれば、手を握れるか?膝立てができるか?
意思疎通がとれるか声をかけて確認します。
術後当日は安静を保つために人工呼吸器管理していることが多いよ
腸管虚血の観察としては、
腹部膨満や嘔吐、代謝性アシドーシス、CPK↑、LDH↑になっていないか?
※実際は気管挿管中であり、胃管からの排液が多くなります。嘔吐の絵はあくまでもイメージです。
下肢の観察は
皮膚の色、冷感、脈の触知ができるか?等をみていきます。
アシドーシスに注意!
むむむ、なんでアシドーシスに注意するのか、わけわかめ。。
大丈夫!理由をひとつずつみていこう!
理由①低体温
前述したように人工心肺時は低体温で管理を行います。
低体温になると、血液の粘調度が増加します。
そうすると、末梢循環が減ります。
その結果、乳酸が増え、代謝性アシドーシスの状態になります。
理由➁デリバリーO2の低下
デリヘル?
こら!
デリバリーO2は、実際に組織に運ばれている酸素のことを言うんだよ
デリバリO2=心拍出量(CO)×動脈血酸素含量(CaO2)
の式で表されます。
さらに、
心拍出量(CO)= 一回拍出量(SV)×心拍数(HR)
動脈血酸素含量(CaO2)= (1.34×Hb×SaO2)+ (0.003×PaO2)
で表すことができます。
ちょ、ちょっ、ちょっとまって!!急に式が出すぎでしょ。
訳がわからんのだが。。
難しいことは考えなくていいよ。
ここで言いたかったことは
ヘモグロビン(Hb)が低くなればデリバリーO2も低くなるってこと。それだけ覚えておいて
- 人工心肺回路のプライミングによる血液希釈で、Hbが相対的に低くなる
- 人工心肺回路の血液ポンプで赤血球が壊れ、Hbが低くなる
Hbが低いってことは、デリバリーO2が低い。
デリバリーO2は組織に運ばれてる酸素だから、低いと乳酸が増える。
だから、アシドーシスの状態になるってことか!!
さらに、
Hb低下による貧血是正のために赤血球製剤の輸血を行うと
一時的にですが、アシドーシスに拍車をかけます。
電解質に注意!
体外循環中は、カリウムは低下傾向となります。
理由は
➀細胞内へのカリウムの移動が起こる
➁血液希釈により腎臓での糸球体濾過量が増え、尿量が増えてカリウムが排泄されるから
※術前から腎機能が悪い場合は、カリウムの排泄が減って高カリウム血症となります。また心筋保護液(カリウムを多く含んでいる)の使用が増えれば、高カリウム血症となります。
体外循環中は、通常カルシウムも低下します。心外手術では、大量の輸血を術中に使用することが多々あります。血液製剤には抗凝固剤として、クエン酸が含まれています。大量に使用することで、低カルシウム血症を引き起こす可能性があります。適宜補正が必要となってきます。
電解質異常により不整脈を引き起こすリスクがあります。
術後は電解質の値にも注意しよう!
はい!!(人工心肺って注意することがパねー)
心不全に注意!
基本的な心臓外科手術の流れは、麻酔導入、胸骨正中切開して
人工心肺開始→心臓止める→オペ→心臓動かす→人工心肺離脱の流れなんだけど
術前の心機能が低い、長時間の心停止、術中の心損傷、冠動脈損傷などで大量の強心薬や適切な負荷を行っても心拍再開が十分にできず、
人工心肺を離脱できない場合があるんだ。。
体外循環離脱困難な場合は、IABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助)が必要になります。
術前のLVEF(左室駆出率)を確認して、体外循環離脱困難のリスク高いか事前に把握しておきましょう。
大動脈解離に注意!
人工心肺回路の送血管の先端によって動脈壁が損傷されると、大動脈解離が生じます。
大動脈解離が起こった場合は、ただちに送血部の変更を行い人工心肺を再開します。
術後、血圧管理がさらに大切になります。血圧管理基準を医師に確認しましょう。
解離が上行大動脈に及ぶ場合は、大動脈解離に対するopeの追加が必要となります。
大動脈解離については下記記事を参照下さい!
まとめ
体外循環は身体に大きな侵襲が生じます。
心臓手術では、体外循環を伴うか体外循環を伴わないかで
患者さんに及ぼす侵襲は桁違いのものになります。
もともとの患者さんの状態に加えて、
手術の種類、体外循環の種類、体外循環時間によっても違ってきます。
今回は人工心肺が身体に及ぼす影響の基本を理解できたら良い。
実際看護をする上では、症例に応じた注意点をその都度考えてみていく必要があるんだな。
✅出血に注意しましょう。ACTの値を確認しプロタミンで中和したり、必要時は輸血の投与も行います。低体温は易出血状態になるので、保温をしっかりしましょう!
✅塞栓に注意しましょう。脳梗塞、腸管虚血、下肢虚血に注意して観察をすることが大切!挿管中でも手や足を動かせるか声をかけて、意思疎通とれるか評価しましょう!
✅アシドーシスに注意しましょう。アシデミアに傾く理由を理解しておこう。Hb低下はデリバリーO2の低下になります。
✅電解質に注意しましょう。電解質異常による不整脈の出現のリスクあり。迅速な補正が必要であり、電解質の推移や心電図変化は注視しましょう!
✅心不全に注意しましょう。術前のLVEFが低い場合は、体外循環の離脱困難となる場合あり。
✅大動脈解離に注意しましょう。術中所見を把握して、血圧コントロールに注意して管理を行いましょう。
どうだった?徹夜せずに先輩に課題出せそうだろ?(やば、俺かっこよすぎ)
ありがとう。本当助かったよ(あー、こいつの話長かったわー)
あなたのおかげよ(一応ねぎらっとくか)
(お!この反応、脈ありか?)今度2人で飯でも行かない?
あ、ごめん。彼氏がいるんだわ(強い口調)
以下、参考文献
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